1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フィールド・オブ・ドリームス
  4. 『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛
『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

(c)Photofest / Getty Images

『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

PAGES


原作者と日本との意外な関係



 原作者であるW.P.キンセラの人生も不遇なものだった。1997年、歩道を歩いているところを車にはねられ、頭部を負傷。集中力が持続できなくなったことから、執筆活動を断念することになってしまったのだ。彼は味覚と嗅覚も奪われ「もう書くことができない」と当時のインタビューで語っている。


 その後、数本の短編やノンフィクションなどを手がけたものの、13年間もキンセラは長編小説を脱稿できないことになる。そして2016年9月、代理人が「死因は公表できないが、81歳で亡くなった」との声明を出した。報道によると、この年の6月にカナダで成立したばかりの法律に基づいた安楽死だった。「人生は難しく、そして死にゆくものだ」と語っていたキンセラの最期は、自らの意思で“死”を選択することになったのである。



(C) 1989 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.


 そんな彼を奮い立たせ、短編小説という形で執筆意欲を掻き立てさせた題材があった。それは、日本の野球界からアメリカの野球界へ渡り、当時シアトル・マリナーズで活躍していた野球選手の姿だった。そう、鈴木一朗 = イチローである。


 日本では「マイ・フィールド・オブ・ドリームス イチローとアメリカの物語」のタイトルで出版された、イチローへの賛辞に溢れたこの本の最終章。そこには「“イチローと野茂”、アイオワにきたる」という短編小説が収録されている。“シューレス”ジョー・ジャクソンとイチローが、あの「夢を叶える場所」で試合を行うという、まさに“フィールド・オブ・ドリームス”が描かれているのだ。


 これはW.P.キンセラの夢であり、我々日本人にとっての夢でもある。実は小説「シューレス・ジョー」には基となった短編小説があり、そのタイトルが「シューレス・ジョー、アイオワにきたる」だったのだ。ちなみにイチローと“シューレス”ジョー・ジャクソンとの間には、ジョー・ジャクソンが長年にわたって保持していた新人安打記録をイチローが破ったという縁由がある。


 思い起こせば、2000年にシアトル・マリナーズと契約したイチローが入団する際、ホームグラウンドであるセーフコ・フィールドで彼はこう語っていた。


「ここは私の“フィールド・オブ・ドリームス”です」。



【出典】

・「シューレス・ジョー」(文藝春秋)  W.P.キンセラ著 永井淳・訳

・「夢の球場の巡礼者たち それからの『フィールド・オブ・ドリームス』」(草思社)フレッド・H・マンデル著 小西敦子・訳

・「マイ・フィールド・オブ・ドリームス イチローとアメリカの物語」(講談社)W.P.キンセラ著 井口優子・訳

朝日新聞デジタル 2016年9月18日

サンケイスポーツ 「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台を訪ねて

・ミシシッピ・リバー・カントリーUSA 日本事務所

ENCYCOLOPEDIA.COM W.P.KINSELLA



文:松崎健夫

映画評論家 東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。『ぷらすと』『japanぐる〜ヴ』などテレビ・ラジオ・ネット配信番組に出演中。『キネマ旬報』、『ELLE』、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。現在、キネマ旬報ベスト・テン選考委員、ELLEシネマ大賞、田辺・弁慶映画祭、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門の審査員を務めている。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)ほか。



今すぐ観る


作品情報を見る




『フィールド・オブ・ドリームス』

4K Ultra HD+ブルーレイ: 5,990円+税

Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 1989 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

※ 2020年5月の情報です。


(c)Photofest / Getty Images

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フィールド・オブ・ドリームス
  4. 『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛