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『ユージュアル・サスペクツ』策士クリストファー・マッカリーが創り上げた、サスペンス映画の傑作※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『ユージュアル・サスペクツ』策士クリストファー・マッカリーが創り上げた、サスペンス映画の傑作※注!ネタバレ含みます。

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観客を巧みにミスリードする、クリストファー・マッカリー作劇術



 物語は、カイザー・ソゼと思われる謎の男にキートン(ガブリエル・バーン)が撃たれるシーンで始まる。だが、キートンが射殺される決定的瞬間は映されない。しかも、サンペドロ港で発見される焼死体は損傷が激しく、身元が不明。これらの事実から、観客は知らず知らずのうちに「ひょっとしたら、キートンは生きているのかもしれない」という可能性を刷り込まれてしまう。


 これぞまさに、クリストファー・マッカリー流作劇術。キートンの恋人である女性弁護士イーディが殺されてしまったのも、自分の妻や子供まで手にかけるカイザー・ソゼらしいやり口。関税局捜査官のデヴィット・クイヤン(チャズ・パルミンテリ)が唱える「真犯人=キートン説」こそ真実であると、巧みにミスリードさせられてしまうのだ。



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 逆に、真犯人ヴァーバルに疑いの目を向けさせてはならない。クリストファー・マッカリーは、ヴァーバルをカイザー・ソゼとは真逆な「口だけは達者な小悪党キャラ」に設定。さらに、冒頭でカイザー・ソゼに左手で銃を構えさせることで、左手・左足に麻痺があるヴァーバルが「信用できる語り手」であると錯覚させる(実は芝居だったのだが)。


 だがその一方で、ヴァーバルがカイザー・ソゼであるヒントも周到に描かれている。ヴァーバルが部屋をやたら見回すという一見何の意味のなさそうなシーンは、もちろん「作り話のヒントを探している」という伏線だし、コバヤシ弁護士のヒントになったコーヒーカップの底を不自然に眺めているシーンも、抜かりなくインサート。冒頭でキートンが「脚の感覚がないよ」と言うのは、左足麻痺のフリをしていたヴァーバルに対する皮肉だろう。さらによく観てみると、クイヤン捜査官が尋問中に胸ぐらを掴むシーンでは、ヴァーバルは動かないはずの左腕で払いのけていたりする(芸が細かい…)。


 ちなみにヴァーバル(verbal)は英語で「おしゃべり」の意味だが、トルコ語のソゼ (sözel)も同じニュアンスの言葉。策士クリストファー・マッカリーは、名前にも伏線を張っていたのだ。



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