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『真夏の夜のジャズ』気鋭のフォトグラファーが撮りきった、伝説のジャズフェス。

(c)1960-2019 The Bert Stern Trust All Rights Reserved.

『真夏の夜のジャズ』気鋭のフォトグラファーが撮りきった、伝説のジャズフェス。

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多彩な選曲①~セロニアス・モンクのピアノ、アニタ・オディの歌声



 最初に登場するのはサクソフォンやクラリネットの奏者として知られるジミー・ジュフリー(1921~2008)率いるトリオ、ジミー・ジュフリー・スリーの「トレイン・アンド・ザ・リヴァー」。シックなスーツ姿で舞台に上がっているのはジュフリーとトロンボーン奏者のボブ・ブルックマイヤー。タイトルバックも重なり、水のイメージを打ち出した映像が新鮮な印象を残す。演奏が終わると、音だけが聞こえていた名ギタリスト、ジム・ホールの姿をほんの一瞬だけ、ステージ上で見ることができる。


 次に登場するのは音をはずしたような独特のピアノ奏法で知られ、名曲「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」の作者でもあるジャズ界の巨人のひとり、セロニアス・モンク(1917~1982)。自身の代表曲のひとつ、「ブルー・モンク」を弾く。ただ、(残念なことに)彼の演奏だけが映るのではなく、途中でヨットの映像へと切り変わる。そのため、音楽ファンからは批判も出る場面となっている。モンクに関しては後にクリント・イーストウッド製作総指揮のドキュメンタリー『ストレート・ノー・チェーサー』(88)も作られている。


 次は天才プレイヤーのチャーリー・パーカーと比較されることも多かった名サックス奏者、ソニー・スティット(1924~1982)が登場して、「ブルース」を演奏。



『真夏の夜のジャズ』(c)1960-2019 The Bert Stern Trust All Rights Reserved.


 4番目に登場するのはジャズ界を代表する白人女性シンガーのひとり、アニタ・オディ(1919~2006)で「スイート・ジョージア・ブラウン」「二人でお茶を」を披露。スキャットを使った歌声がパワフルで、後者は原曲のイメージをとどめないほど速いテンポのアレンジとなっている。また、大きな黒の帽子に白と黒を基調としたエレガントなドレスというコスチュームにも視覚的なインパクトがあり、ファッション誌で活躍していた監督の本領発揮ともいえる洗練された場面になっている(アニタの自伝によれば、この日のドレスと帽子を彼女はグリニッジ・ヴィレッジの店でイタリア人の店員の勧めで買い求めたそうだ)。


 次は英国出身の盲目のピアニスト、ジョージ・シアリング(1919~2011)のカルテット。メロディアスなスタンダード・ナンバー、「バードランドの子守唄」の作者としても知られているが、彼はラテン系のアルバムも出していて、ここではノリのいいラテン系のナンバー「ロンド」を演奏する。


 “ブルースの女王”といわれる黒人の女性シンガー、ダイナ・ワシントン(1924~1963)はでスタンダード・ナンバー「オール・オブ・ミー」を歌い、エネルギッシュなステージを披露する。


 その後はサックス奏者のジェリー・マリガン(1927~1996)のカルテットが「アズ・キャッチ・キャン」を演奏する。ピアノなしのカルテットを作って、ウエストコースト・ジャズの流れを変えたと言われたマリガン。彼はサントラ盤の仕事も残していて、ロバート・ワイズ監督が女性の死刑囚を描いた『私は死にたくない』(58)にシェリー・マンアート・ファーマーらと共に参加。また、50年代のロサンゼルスを舞台にした犯罪映画『L.A.コンフィデンシャル』(98)でも彼の演奏が効果的に使われていた。



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