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『ようこそ映画音響の世界へ』“映画中毒”を加速させる、目から鱗のドキュメンタリー

(c) 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

『ようこそ映画音響の世界へ』“映画中毒”を加速させる、目から鱗のドキュメンタリー

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「音響が持つ物語性」を定義する冒頭4分



 作品の中身に入る前に、まずは『ようこそ映画音響の世界へ』を手掛けたミッジ・コスティン監督についてご紹介しよう。彼女自身が25年にもわたってキャリアを重ねてきた音響デザイナー/音響編集者であり、『ザ・ロック』(96)、『コン・エアー』(97)、『アルマゲドン』(98)といったアクション大作に携わってきた。


 とはいえ、彼女のインタビューによれば、元々は映画監督や映像編集者を目指していたそう。コスティン監督は当時を振り返り、「私はお金のために『音』の編集の仕事を引き受けました。それまでは音響編集は魅力が乏しく、魂のないエンジニアのオタク向けの技術分野のように思っていたのです。私の興味は『物語』にあったのです」と語る。


 しかし、音響編集の仕事に就いた彼女は、考えを改める。「私は音を使って物語やキャラクターを明らかにし、アイデアを明確にし、感情を表現することができると知りました」。つまり、彼女が目指していた「物語」を構築するうえで、音の存在感が非常に重要であるということ。音のデザインによって、物語をいかようにでも生み出すことができるのだ。


 本企画は、コスティン監督の同僚であるボベット・バスターが提案したところから動き出したそうだが、冒頭から上に挙げたような意識が、強く感じられる内容になっている。登場する音響技術者や、監督たちの言葉を通して、「音響が持つ物語性」を定義するのだ。



『ようこそ映画音響の世界へ』(c) 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.


 トップバッターを飾るのは、『地獄の黙示録』(79)の音響デザイナー、ウォルター・マーチ。彼が語る「音が与える印象は、映像よりずっと強い。だが気づいていない人が多い」という言葉に続き、『スター・ウォーズ エピソード 4/新たなる希望』(77)や『インディ・ジョーンズ』シリーズの音響デザイナー、ベン・バートは「スクリーンの中の音が、“本物”に思える」、『ターミネーター』シリーズから『トイ・ストーリー』(95)まで手掛ける音響デザイナー・ミックスダウン技術者のゲイリー・ライドストロームは「感情を大きく左右する要素だ」と解説する。


 対して、ソフィア・コッポラは「音楽は救いになる」、クリストファー・ノーランは「感情の幅が広がる」、ライアン・クーグラーは「音はイメージに直結している」、アン・リーは「映画は映像と音の2つで出来ている」、デヴィッド・リンチは「映画について語るとき、音にスポットを当てる人は少ない。だが映像以上に重要だ」と証言。そしてジョージ・ルーカスは「映画体験の半分は音だよ」と締めくくる。


 以上が、本作のタイトルが映し出されるまでの約4分の内容。しかもそこに、『ジュラシック・パーク』や『インディ・ジョーンズ』『スター・ウォーズ』『ブラックパンサー』等々、多数の名作の本編シーンが挿入される。非常に密度の濃いオープニングといえるだろう。


 そしてここから、いよいよ映画音響の奥深い世界に入っていく。



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