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『ようこそ映画音響の世界へ』“映画中毒”を加速させる、目から鱗のドキュメンタリー

『ようこそ映画音響の世界へ』“映画中毒”を加速させる、目から鱗のドキュメンタリー

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試行錯誤の連続だった『スター・ウォーズ』の音作り



 『ようこそ映画音響の世界へ』の魅力を「豪華な出演者」と「映画音響史の解説」と書いたが、本作は構成自体も実にわかりやすい。映画における音を「音楽(MUSIC)」「効果音(SOUND EFFECT)」「人の声(VOICE)」の3つに大別し、各パートごとに解説するのだ。


 本作で語られる「音楽」「効果音」「人の声」の詳細は映画を観てのお楽しみということで、ここでは、“音を作る”と“音で作る”の2つに注目して、ご紹介しよう。


 “音作り”の先駆け的存在として語られるのは、モンスター映画の金字塔とされる『キング・コング』(33)だ。本作の音響デザインを担当したマーレイ・スピヴァックは、架空の動物の声を生み出すために動物園を訪れ、飼育されている動物たちの吠え声を録音。トラの声を逆再生し、半分の速度に変換したライオンの声と重ねたという。


 この方法論は現在でも行われており、『ようこそ映画音響の世界へ』の劇中では、『スター・ウォーズ』のチューバッカの“声”がいかにして生み出されたのかが、音響デザイナー、ベン・バートによって語られる。




 セイウチやライオンなど、様々な動物の声を採取したバートは、ある1頭のクマと出会う。プーという名のそのクマが実に感情豊かだったため、様々なパターンの声を採取でき、チューバッカの声につながっていったそうだ。その他にも、「SF映画にありがちな電子音は使いたくない。生の“本物”の音がいい」というジョージ・ルーカス監督の依頼を受け、ライトセーバーの音や銃声、飛行音など、ありとあらゆる音を1年かけて探し回ったという。


 中でも苦労したのはR2-D2の声で、数ヶ月かけてもしっくりくるものが生まれない。そんなとき、バートはルーカスとの会話の中で「言葉とは音の表情だと気づいた。抑揚が、意味を伝えるんだ」と思い至る。「言語とは音」と定義づけたバートは、自らの声にキーボードの音を重ね合わせて、R2-D2の声色を表現。映画史に輝く『スター・ウォーズ』の音作りは、試行錯誤の連続だったのだ。


 これらは実世界に“ない”音を作る作業だが、『トップガン』(86)では実際のジェット機の音を録ったところ、映画として使うには「意外と退屈」だったという。そこで考え出されたのが、動物の吠え声。ライオンやトラ、サルなど何種類もの動物の声を重ねることで、耳に刺さるような鋭利な音に作り上げたという。


 その後、『トイ・ストーリー』等ではコンピュータによる音作りが進められ、一気にデジタル化。『マトリックス』(99)では、音響デザイナーのディーン・デイヴィスが「デジタルの世界ではすべては0か1。そのギザギザ感を伝えたかった」と、まだ慣れないデジタルな音作りに苦心したと語っている。




 『ようこそ映画音響の世界へ』にはまだまだ「音作り」についての興味深い内容が詰め込まれている。「フォーリー」という言葉をご存じだろうか? 現場で撮影したものとは別録りする環境音のことだが、それらを生み出す「フォーリー・アーティスト」の仕事場にも潜入しているのだ。


 映画内では、『インセプション』(10)の音がどう作られたのかが明かされるのだが、フォーリー・アーティストが濡れたタオルや布切れを使って衣服の動きを表現したり、スキーが雪上に着地する音を砂袋を使って表現したり、主人公がガラスを踏む音を松ぼっくりで表現したりと、目からうろこの映像が連続する。


 ちなみに、「フォーリー」とは『スパルタカス』(60)等で活躍した音作りの先駆者「ジャック・フォーリー」の名に由来するそうだ。



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