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『グレムリン』はもっと残酷でグロいはずだった!?学生の脚本をヒット作に昇華させた、スピルバーグのプロデュース術

『グレムリン』はもっと残酷でグロいはずだった!?学生の脚本をヒット作に昇華させた、スピルバーグのプロデュース術

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オリジナルは想像以上にダークでグロかった!?



 しかしながら、『グレムリン』は一つの大きな問題をはらんでいた。コロンバスの手によるオリジナル脚本は実際の完成版とは比べものにならないくらいのダーク・ホラーであり、笑えるシーンはありながらも、とてもじゃないが子供には見せられないグロなシーンに満ちていたのである。


 一方、監督として抜擢されたジョー・ダンテも、当初、この脚本のダークな描写に「わっ!」と驚いたという。例えば、オリジナル版にはグレムリンがマクドナルドを襲撃して、ハンバーガーではなく客を食べるというとんでもないシーンがあった。


 そして今や伝説となった自宅のキッチンにおける「ママVSグレムリン」の奇妙奇天烈なバトルも、オリジナルではママが敗北するどころか、主人公ビリーが帰宅するとママの首が階段からゴロンと転がり落ちてくるというギョッとする描写が盛り込まれていたとか。その上、グレムリンたちが愛犬をクリスマスの電飾で飾り付けるどころか、ワイワイ言いながら食べてしまうシーンもあった。



『グレムリン』


 これらを映像化するとすれば選択肢は二つに一つ。このオリジナリティを尊重して、低予算のまま、マニア向けのホラーとしての道を突き進むか、あるいは大幅に脚色して大衆路線へ舵を切るかだ。そして仮に本作でグレムリンの特殊造形に重きを置くとするならば、スタジオから多額の制作費を確保する意味でも、ファミリー向けに脚色するしか道は残っていなかったものと思われる。


 となると、ここからが大変だ。スピルバーグやジョー・ダンテら作り手たちは、オリジナルの脚本をたたき台として、そこにまた新たな脚色を加えていく多大な労力を求められることになった。


ダーク・ホラーがホラー・ファンタジーへと変貌する過程



 ジョー・ダンテは当時の映画作りについてこう語る。


 「この前代未聞の映画の前では、事前の周到な計画など何ら意味を持たないことに気がついた。むしろ大切なのは、現場で感じた“面白いもの”“楽しいこと”を見逃さずにつかまえて、きちんと形にしていくことだ」


 この映画が当初の「ダーク・ホラー」から「ホラー・ファンタジー」へと変貌していった背景にも、そういった現場での即座の判断が多分に影響したのは言うまでもない。


 そして、モグワイやグレムリンという未知なる生き物を、パペット人形にて表現したのも勝因となった。脚本上では凶暴で残忍なグレムリンであっても、パペットで表現するとどことなく可愛らしさが生まれる。その緩衝性によってホラーの度合いが当初の脚本よりも柔らかくなったというメリットは極めて大きい。


 これがもしも数年遅ければ、スピルバーグは『ジュラシック・パーク』(93)に向けて早々に大規模な技術改革へと着手し、パペットはCGへと置き換えられていたことだろう。そうなると『グレムリン』もオリジナルに近い生々しさが前面に出て、緩衝性が薄れていたはずだ。本作はある意味、アナログな技術によって救われたと見るべきなのかもしれない。



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