2020.08.31
アメリカ映画の秘密を知る最後の男、イーストウッド
1930年生まれのイーストウッドには、ハリウッド黄金期の映画の記憶がふんだんに詰まっている。インタビューを読めば、レジェンド級フィルムメーカーとの邂逅も次から次に出てきたりもする。
「例えばハワード・ホークスだ。わたしが最初に会った監督だ!」
「フランク・キャプラには、カリフォルニアの北にあるモノ・レイクで『荒野のストレンジャー』を撮影していたときに知り合った」
「(アルフレッド・ヒッチコックに)会ったことは一度しかない。ずっと後になってから、彼がなくなる直前だ」
「ビリー・ワイルダーが『翼よ! あれが巴里の灯だ』を撮る準備をしていたとき、接触する機会があった」
(『孤高の騎士クリント・イーストウッド』より抜粋)
『スペース カウボーイ』(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
うーむ、出てくる名前がビッグネームすぎて、読んでいるコッチがドキドキしてしまいますね。もはやイーストウッドは、古き良きハリウッドの撮影技術&話術を体得した、老賢人的存在なのである。パンフレットを読んでみると、インタビュアーがこんな疑問を投げかけていた。
インタビュアー:「主人公フランクだけが衛星の修理法を知っているという設定は、あなただけが1950年代の偉大なアメリカ映画の秘密を知っているというメタファー(暗喩)ではありませんか?」
イーストウッド:「面白い着眼だね。私自身そのように考えたことはないが、たしかに昔の映画はより大きなスコープで物ごとを見せていた。TVで見せるために、映画を作っていたわけではなく、映画は映画館でだけ見せるものだったからね。それなりのスケールで物ごとを見せていた。」
(クリント・イーストウッドのインタビュー パンフレットより抜粋)
イーストウッドはかつて、『許されざる者』(92)でアメリカ映画の代名詞ともいうべき西部劇を埋葬してみせた。しかし皮肉にも、アメリカ映画の秘密を知る最後の男としてイーストウッドはハリウッドに今なお屹立している。その僥倖に我々映画ファンは感涙すべきだろう。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
『スペース カウボーイ』デジタル配信中
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD 特別版¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(c)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
(c)Photofest / Getty Images