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『ブラックホーク・ダウン』全編2/3を占める戦闘シーンの衝撃と虚無感

(c)Photofest / Getty Images

『ブラックホーク・ダウン』全編2/3を占める戦闘シーンの衝撃と虚無感

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言葉に還元できぬ“虚無”こそが、争いの本質



 こうしたスタッフたちの凄絶なる戦いの果てに、まさしく「地獄絵図」は創造され、映像が言葉よりも強く戦いの悲壮さを物語るものとなった。リドリー・スコットはこう語っている。


「『ブラックホーク・ダウン』は前列に座った観客が終始、兵士と一体感を味わうことのできる作品を目指した。結果が悲惨なものだとすればそれは意図したもので、ある意味で作戦に参加した兵士たちに対する尊敬の念から生じている」(*2)


 スコット監督自身は「モガディシュの戦闘」を、国際社会が静観していたソマリア紛争に対し、アメリカだけがアクションを起こした正義的行為だと支持を表明、この映画の制作の発露としている(*3)。



『ブラックホーク・ダウン』(C) 2001 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY LLC AND JERRY BRUCKHEIMER,INC.TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 しかしこの映画が放つ、観る者の目を奪うようなすさまじいまでの暴力の嵐は、もはや一方的な主義や主張を拒絶する。ときおり映画ファンが、たわいなく「頭から終わりまでドンパチやってる戦争映画が観たい」といった共同幻想を口にすることがあるが、実際にそれを現実とした作品を目の当たりにしたとき、全身を覆うのは言葉に尽くしがたい虚無感だ。同じような印象を本国の評論家も感じ取ったのだろう。それが冒頭のチャプターで記した「ニューズウィーク」の見出しに集約されるのである。



■出典

(*1)Laurence F.Knapp and Andrea F.Kulas “Ridley Scott:Interviews”より(University Press of Mississippi)February 4,2005

(*2)「シネフェックス日本語版 第33号」特集/『ブラックホーク ダウン』より(トイズプレス刊)

(*3)ブラックホーク・ダウン(Blu-ray)リドリー・スコット監督音声コメンタリーより(パラマウント)



文: 尾崎一男(おざき・かずお)

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。Twitter: @dolly_ozaki



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『ブラックホーク・ダウン』

Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 2001 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY LLC AND JERRY BRUCKHEIMER,INC.TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

※ 2020年9月の情報です。


(c)Photofest / Getty Images

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