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『胸騒ぎのシチリア』ルカ・グァダニーノの”欲望3部作”の2作目が描く、欲に囚われた人間が行き着く先

『胸騒ぎのシチリア』ルカ・グァダニーノの”欲望3部作”の2作目が描く、欲に囚われた人間が行き着く先

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3部作の魅力的な共通点とは?



 3部作はどれもプロットは異なっているものの、イタリアの大自然を背景に、ブルジョワジーたちが各々の内部に芽生えた抗し難い欲望によって、予期せぬ運命に引きずられていく話となっている。彼らが抱く欲望は、人間を絶望の淵に立たせ、時には奈落の底へと突き落とすが、一方で、そこから新たな人生を切り開いていく者もいる。


 作品毎に解説しよう。まず、『ミラノ、愛に生きる』のヒロイン、エマは、イタリア貴族の家に彼女は、嫁いだロシア移民。家の窮屈さから解放されるように、息子の友人である若いシェフとの不倫に走る。また、『君の名前で僕を呼んで』の主人公、エリオは、夏のロンバルディアで出会ったアメリカ人青年と狂おしい恋に落ち、痛ましい進歩を経験するが、直後から彼の中で再生が始まる。


 人間にとって欲望はいつも厄介だが、それ故に、映画的なスリルとサスペンス、そして当然、エロチックな愉しみを含みながら、やがて、物語を劇的な結末へと向かわせる。その間、グァダニーノは作品に流麗なカメラワーク、繊細な色彩、大胆で躍動的な音楽を惜しみなく注ぎ込み、ヨーロッパ映画の伝統を受け継ぐ洗練された世界を構築して来た。


 では、『胸騒ぎのシチリア』で描かれる欲望は、いったいどんな風に人間の運命を翻弄するのか? 本作は、アラン・ドロン主演、ジャック・ドレー監督による『太陽が知っている』(69)を基本的には踏襲しながらも、細部とテイストは異なることから、”緩いリメイク”と称される。




 また本作は、イギリスのポップアーティスト、デビッド・ホックニーの代表作で、映画の原題と同じく”Bigger Splash”と題されたポットプアートにインスパイアされている。それは、プールの手前に飛び込み台があり、人はいないのに水面には誰かが飛び込んだ後にような水飛沫が上がっている不条理な絵画である。


 映画は、そのプールをクライマックスの舞台に用意する。イタリアの美しい孤島でバカンスを楽しむロックスターのマリアン(ティルダ・スウィントン)と、恋人の撮影監督、ポール(マティアス・スーナールツ)の前に、ある日、マリアンの別れた恋人で、 音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、娘のペン(ダコタ・ファニング)を連れて訪れる。そこから彼らの四角関係が発生し、微妙に軋み始める。


 マリアンの中でハリーへの愛はとうに消え失せているのに、ハリーはマリアンにしつこく復縁を迫ってくる。当然、ポールは心を乱され、そこに、彼に対してあからさまな興味を示したペンが接近していく。そもそも、ハリーはペンを娘だと皆に紹介したが、どうもそうではないらしい。まるで仕組まれたような欲望のドラマは、やがて、ホックニーのアートの如く、真夏のプールを舞台に、消えた人間の余韻が不気味に漂う水面に謎を残して、予想外の幕切れを迎える。



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