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『胸騒ぎのシチリア』ルカ・グァダニーノの”欲望3部作”の2作目が描く、欲に囚われた人間が行き着く先
ミューズ以上の存在、ティルダ・スウィントン
さて、”欲望3部作”の中の2作と、その前にグァダニーノの監督デビュー作『The Protagoiest』(99)にナレーターとして参加し、さらに、『サスペリア』(18)も含めて、合計4作でコラボしているのがティルダ・スウィントンだ。
封印している欲望や感情に突き動かされ、時には日常を捨て去ることになる危険な状態を、演出意図に忠実に従い、監督が思い描く世界へと共に旅立つスウィントン。彼女について聞かれた際、グァダニーノはこう答えている。「僕は人生の中でティルダと出会い、友人となり、また、素晴らしいパートナーになりました。僕たちにとって映画は、一緒に会話したり、旅行するのと同じこと。2人は一緒にいなければならない関係なのです」と。
それに対して、スウィントンは、「私たちは砂場に入った6歳の子供のようなもの。いつも冒険を夢見ていて、とても信頼し合っているのよ」と応じている。彼らの関係は近年少なくなった女優と監督の運命共同体のようでもあり、出来上がる作品は、デザイナーが愛するミューズのためにカスタマイズしたドレスよりも、余程ファッショナブルだ。
『胸騒ぎのシチリア』(C)2015 FRENESY FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED
因みに、『ミラノ、愛に生きる』では当時ジル・サンダーのクリエイティブ・ディレクターだったラフ・シモンズが、スウィントンのためにいかにもミラノのブルジョワが好きそうな高価なワンピースやコート、シャツやパンツをデザイン。
『胸騒ぎのシチリア』では、その後ディオールの専任デザイナーに就任したシモンズが、大胆なホルターネックのサマードレスなど、ラグジュアリーなリゾートファッションを提供している。つまり、ティルダ・スウィントンは映画監督のみならず、ファッション・デザイナーのクリエイティビティも刺激する、発想の源泉なのである。
参考文献
https://www.theartsshelf.com/2016/06/28/a-bigger-splash-luca-guadagnino-interview/
文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
『胸騒ぎのシチリア』
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価格:3,900円 (税抜)
発売元:株式会社キノフィルムズ/木下グループ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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