4年を経て実現した二人の再コラボレーション
本作は、2006年ごろにセス・ロックヘッドが考案したオリジナルのストーリーがすべての原点となっている。彼の原案は、2度にわたってハリウッドのブラックリスト(業界人が選ぶ、まだ映画化の道筋が決まっていない優秀脚本)に名を連ねるなど、早いうちから方々で注目の的に。その後、一時は『トレインスポッティング』(96)のダニー・ボイルが関わったり、またアルフォンソ・キュアロンの名前が取り沙汰されたこともあった。
が、シアーシャ・ローナンが本作への参加を決めた時、監督のポジションは空位状態にあったとか。そこで彼女は、かつて『つぐない』で自分を抜擢し、映画界の高みへと導いてくれたジョー・ライトの名前を提案。自分が主演すると知れば、きっと彼も興味を持ってくれると確信したのである。
『ハンナ』(c) 2011 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
彼女の読みは当たった。そもそもライト監督は、幼い頃から「劇団」や「一座」に囲まれて育ってきた(彼の両親は人形劇場の創設者だった)こともあり、極めて仲間意識の強い人として知られる。きっとローナンとの間にも「いつかまた必ず」という共通意識が結ばれていたのだろう。そして最終的に彼を突き動かしたのも、映画の内容以上に、「シアーシャ・ローナンの女優としての成長ぶりを見てみたい」という純粋な思いだった。
とはいえ、今回ばかりはローナンに課せられたものがあまりに大きい。映画の良し悪しは、彼女がいかにスクリーンで説得力のあるアクションを披露できるかにかかっている。
「過酷な日々が待ってるぞ。本当にやれるかい?」
ライト監督にそう問われたローナンは、「平気よ、やれる」と答えた。
かつて水泳をやっていたから、体力には自信があったようだが、数か月間に及ぶトレーニングはそれにも増してハードなものとなった。だが、彼女はいっさい弱音を吐くことなく、これまでと全く次元の異なるフィジカルな役作りを極めていった。