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ドラマ『ハンニバル』残酷描写の限界を更新!マッツ・ミケルセン代表作

(c)Photofest / Getty Images

ドラマ『ハンニバル』残酷描写の限界を更新!マッツ・ミケルセン代表作

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ハンニバルの正体を「知らない」という新たな視点



 『ハンニバル』で興味深いのは、『羊たちの沈黙』では獄中にいたハンニバルが、本作では善良な精神科医として普通に働いていること(裏では犯罪に手を染めているが)。そんな彼が、警察に捜査協力する――というつくりになっていることで、バレる/バレないのスリルが付加される。ウィルが少しずつハンニバルに疑念を抱き始め、ふたりの攻防が発生していく、という流れは、これまでにはなかった展開だ。


 しかも、当然ながら視聴者である我々はハンニバルが人食の殺人鬼であると「知っている」。そのため、ウィルが核心に迫っていく姿にゾクゾクとさせられるし、ハンニバルの側から観て「うまく隠しおおせるのか?」といった楽しみ方もできる。当初から殺人鬼として登場していたハンニバルではなく、まだその存在を知られていない時代の彼を描くことで、サスペンスを生み出す――。著名なキャラクターを、非常にうまく処理したアプローチだ。


 『ハンニバル』には、捜査協力する中で他の犯人の手口を知ったハンニバルが、模倣殺人を犯し、罪をちゃっかり犯人に着せて死体だけ頂く、というような「漁夫の利」的ずる賢さをみせるシーンや、他の犯人に嫉妬するような描写もあり、彼自身の“スタイル”もまだ粗削りな部分があるのが面白い。本人もカウンセリングに通ったり、自身のアイデンティティを喪失しかけたり、ハンニバルの“成長”も描かれていく。



『ハンニバル』(c)Photofest / Getty Images


 また、ハンニバルに出し抜かれたウィルが、罪を着せられ、トレードマークでもある拘束衣を着る羽目になる(精神病院に収容される)、という衝撃的な展開も待ち受けており、パブリックイメージを逆手に取った技巧が光る。


 さらに、ドラマ版は基本的に毎エピソード続々と猟奇殺人鬼が登場し、彼らを捕まえる(大体1、2話ほどで解決)という構造になっているため、構造的にはかなりシンプルで観やすい(彼らが実はハンニバルとつながっている場合も往々にしてある)。


 殺人鬼それぞれの手口も奇抜で、『スパイダーマン』や『バットマン』のような、多彩なヴィランが登場する一種のユニバース化した作品としても見ることができる。強烈なハンニバル予備軍たちの活躍を追いかけることもできればできれば、ハンニバルと殺人鬼の「悪VS悪」の対決も収められているのだ。


 なお、本作の世界観の構築には、デイヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・クローネンバーグやダリオ・アルジェントの影響があるそうで、強引にまとめるなら奇妙で不気味なムードを醸し出すクリエイターたちの薫陶を受けた作品といえる。



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