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観る者すべての感覚をアップデートする、ドゥニ・ヴィルヌーヴが緻密に仕掛けた鮮烈な『メッセージ』とは

観る者すべての感覚をアップデートする、ドゥニ・ヴィルヌーヴが緻密に仕掛けた鮮烈な『メッセージ』とは

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時間感覚のアップデートに貢献した製作チーム



 時間の認識がアップデートされるような映像体験は、視覚や聴覚の要素によって補強されている。まず印象的なのが、円形をしたヘプタポッドの表意文字。デザインチームが映画のために創作したこの文字体系では、一文に相当する意味がひとつの円形の文字で表現され、文の始まりも終わりもない。これは時間が過去から現在、未来へと直線的に進むのではなく、円環のようにつながっていることを象徴している。




 音楽を担当したヨハン・ヨハンソンは、円形の文字から「時が循環するイメージ」を得て、16トラックのテープループ装置でピアノの音を多重録音。その際に打鍵音を敢えて入れずにフェードインすることでビートを曖昧にして、無限に続くタイム感を表現した。


 さらに映画のオープニングとラストでも、夕闇前のブルーに覆われたルイーズの自宅のショットが繰り返され、どちらのBGMもマックス・リヒターの『On the Nature of Daylight』が流れる。ここでもまた、終わりと始まりがつながり、時間が円環するイメージが表現されているのだ。


エイミー・アダムスの奥深い名演は二度見必見!



 ルイーズ役は、ヴィルヌーヴのファーストチョイスだったというエイミー・アダムス。言語学者としての理知的な面、娘を育て慈しむ母親の顔、危機的状況に立ち向かう強い意志をしなやかに演じ、キャラクターを立体的に造形した。


 先に述べたように、『メッセージ』には構成上の仕掛けがある。本編を観終えて、その仕掛けと結末をすべて理解したあとで映画を再見すると、時折挿入される「ルイーズと娘ハンナの記憶」のシーンで、アダムスが常に諦念をにじませていることに気づかされ、いっそう胸が締めつけられる。


傑作SFが贈る“メッセージ”とは



 本作を観たからといって、ルイーズと同じ時間感覚を獲得できるわけではもちろんない。それでも、「生の時間は有限であり、死は必ず訪れる」という普遍の真理、当たり前すぎて意識することさえ忘れそうな事実を、『メッセージ』は鮮烈なアプローチで改めて思い出させてくれる。死を予期して絶望するのではなく、限られた時間を大切に生きる。それこそが観客にとっての新しい時間感覚であり、至高の贈り物なのだ。



文: 高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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『メッセージ』 Blu-ray

発売中 ¥2,381(税抜)

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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