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『SOMEWHERE』孤独の描き手、ソフィア・コッポラ監督が紡ぐ「ひとときの救済」

(c)2010-Somewhere LLC

『SOMEWHERE』孤独の描き手、ソフィア・コッポラ監督が紡ぐ「ひとときの救済」

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「親への自覚の芽生え」が象徴する、生きがい



 「時間」という観点でいうと、クレオがジョニーを「父として慕う」ことで、「時間の感覚が消失する」、という部分が興味深い。父娘として過ごす時間は飛び飛びで、ジョニーはクレオについて知らないことだらけだ。ただ、クレオがジョニーを父と認め、愛情を手渡すことで、会えなかった期間の年月は飛び去っていく。是枝裕和監督の『そして父になる』(13)ではないが、親を親にするのは、子どもなのだ。


 多忙な日々を送るジョニーが、クレオと過ごす時間にある種の永遠性を感じる部分も、幸福な時間の終わりに際し、これまでの人生に対する“懺悔”のような感情を抱くシーンも、そしてまた、受け身な生活の空虚さから解き放たれ、人生に意味を見出す(見出そうと行動する)展開も――。ジョニーに起こる“変化”は全て、クレオが与えたものだ。


 『SOMEWHERE』が描く物語に続きがあるとしたら、ジョニーは恐らく、より自らの行動に自覚的になるだろう。自らの血を引き、そして自らを肯定してくれる、娘の存在が心のよりどころになったからだ。前妻との関係はきっと、元には戻らない。ただ娘においては、いまの自分を受け入れてくれた。ならばこそ、変わろうともがくのは、親の務めではないだろうか。本作のラストには、そんな微かな希望が、優しく込められている。



(c)2010-Somewhere LLC


 つまり、『SOMEWHERE』は、娘が父を癒し、救う物語なのだ。女性が男性の運命を変える、主導権を握っているという点では、本作もまぎれもない「ソフィア・コッポラ監督の映画」といえる。ただ、こと本作においては、救われるのは父親ばかりではない。


 今やハリウッドきっての若手演技派俳優に成長し、プロデューサーとしての活動も積極的に行うエル・ファニング。「妖精」と称される彼女が『SOMEWHERE』で振りまく無防備な愛情、そして一滴の涙は、混迷の時代を生きる私たちに、清廉さを思い出させてくれる。


誰かが、必要としてくれるということ。

それだけで人は、独りではなくなる。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema



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『SOMEWHERE』

Blu-ray:¥4,700 + 税 / DVD:¥3,800 + 税

発売元:株式会社東北新社

販売元:TCエンタテインメント株式会社

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