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『SOMEWHERE』孤独の描き手、ソフィア・コッポラ監督が紡ぐ「ひとときの救済」

(c)2010-Somewhere LLC

『SOMEWHERE』孤独の描き手、ソフィア・コッポラ監督が紡ぐ「ひとときの救済」

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『SOMEWHERE』あらすじ

ハリウッドの映画スター、ジョニー・マルコ。彼はロサンゼルスのホテル“シャトー・マーモント”を仮住まいにし、高級車を乗り回してはパーティーで酒と女に明け暮れ、まさにセレブリティらしい華やかな生活を送っていた。しかし、それらはいずれも孤独な彼の空虚感を紛らわすだけのものに過ぎなかった。そんな彼が大切にしているのは、前妻と同居する11歳の娘クレオとの親子の短いひとときだった。自堕落な日常を過ごす彼だったが、母親の突然の長期不在により、無期限でクレオの面倒を見ることになる。やがて、映画賞の授賞式出席のためクレオと一緒にイタリアへと向かうジョニーだったが…。


Index


“不可侵の安らぎ”を綴じ込めた一作



一緒にいたら、まどろむ時間さえも幸せだった。

娘との静かな日々が、虚ろな心を修復していく。


 ソフィア・コッポラ監督にとって、4本目の長編監督作となる『SOMEWHERE』(10)。ハリウッドスターと娘の、不確かで繊細な関係性を描いた本作は、第67回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作、という輝かしい事実を忘れてしまうくらいに私的で、静的な逸品だ。


 ハリウッドで活躍する人気俳優ジョニー(スティーヴン・ドーフ)。狂騒の中を生きる彼は、高級ホテルで暮らしながら、心にどうしようもない虚無感を抱えていた。そんなある日、前妻との子どもであるクレオ(エル・ファニング)を預かることになる。娘と穏やかな日々を送る中で、安定と幸福を感じ始めるジョニーだったが、クレオが母親の元へ戻る日は無情にも近づいていた――。


『SOMEWHERE』予告


 ちなみに、第67回のヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門は、『ブラック・スワン』『十三人の刺客』『エッセンシャル・キリング』と、なかなかに濃いラインナップで、審査委員長はクエンティン・タランティーノ。淡々としたムードが漂う本作は、かなり異彩を放つ存在だっただろう(余談だが、審査員の満場一致にもかかわらず、コッポラとタランティーノが元恋人だったことから、一部から野暮な憶測が飛んだようだ)。


 また、2010年のナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では、インディペンデント映画のトップ10にランクイン。本作のほかには、『アニマル・キングダム』『ゴーストライター』『モンスターズ/地球外生命体』といったアイデア性が際立つ作品が並ぶ。


 日本での公開は、2011年の4月。この年は『ハリー・ポッター』シリーズの完結編『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』や『英国王のスピーチ』『ソーシャル・ネットワーク』などが公開され、かなり豊作だった印象だ。『SOMEWHERE』と同時期公開の作品も、『ブルーバレンタイン』や『キッズ・オールライト』など、傑作がひしめいている。


 ただその中でも、仮に受賞歴を抜きにしても、やはりこの『SOMEWHERE』は特別な輝きに満ちている。何が起こるわけでもない、100分に満たない小品ではあれど、そのぶん公開から10年経っても、何ら古びることなく、観る者を優しく包み込む。それはきっと、「心の聖域」ともいえる“不可侵の安らぎ”を、綴じ込めているからであろう。


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