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『刑事ジョン・ブック 目撃者』映画が描いたアーミッシュ、その異世界への気づき

(c)Photofest / Getty Images

『刑事ジョン・ブック 目撃者』映画が描いたアーミッシュ、その異世界への気づき

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“非暴力”の教えは、暴力に立ち向かえるのか?



 ノベライズと映画の最大の相違は、敵と対決するクライマックスだろう。


 ジョンがアーミッシュの村に潜伏していることを突き止めた汚職警官たちが、ジョンや目撃者であるサミュエルを殺そうと襲撃にやってくる。一番の黒幕であるシェイファー副署長はレイチェルを人質に取るが、無抵抗のアーミッシュの人たちに囲まれて追い詰められていく。


 ノベライズでは、シェイファーが怯んだ隙を突いて、ジョンがシェイファーを地面に叩きつけて手錠をかける。その鮮やかな手腕によって、ジョンが優れた刑事であり、アーミッシュの村に残ることはできないという現実が示されているのだ。


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 一方映画では、ジョンは「ここにいる全員を殺すつもりか!もう十分だろう!」とシェイファーに叫び、シェイファーももはやここまでと諦める。華やかなアクションもなければ、ジョンの手柄で事件が解決したわけでもない。アーミッシュの非暴力の精神が、結果的に暴力に打ち勝つのである。


 この改変が、ピーター・ウィアー監督が打ち出した方針だったのかどうかはよくわからない。ただし内容や関係者のコメントから類推する限りでは、ノベライズはウィリアム・ケリーとアール・W・ウォーレスが書いた初期脚本をベースにしている。そして完成した映画の方が、アーミッシュに対してよりフラットな視線を向けているし、彼らの信仰により大きな価値を見出しているように見える。


 少なくとも初期脚本に忠実であれば、アーミッシュに対して興味本位とは言わないにしても、もっとわかりやすい刑事ジャンルのフォーマットに落ち着いていて、この映画が獲得している哲学的な奥深さは減じていたと思われるのだ。




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