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『クイーンズ・ギャンビット』世界中を熱狂の渦に巻き込んだ、新世代のビルドゥングス・ロマン ※注!ネタバレ含みます。

COURTESY OF NETFLIX

『クイーンズ・ギャンビット』世界中を熱狂の渦に巻き込んだ、新世代のビルドゥングス・ロマン ※注!ネタバレ含みます。

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盤面上のドラマをエンターテインメントとして昇華



 スコット・フランクが映像化にあたって最も頭を悩ませたのが、「チェスをどう描くか」だった。最大の山場は当然チェス・シーンであるからして、全く馴染みのない観客にも興奮を味合わせる演出が必要となる。彼に啓示を与えたのは、天才チェス・プレイヤーと称されたボビー・フィッシャーと、ソ連世界チャンピオンのボリス・スパスキーとの戦いを描いた『完全なるチェックメイト』(14)だった。


 「私はエドワード・ズウィックの映画『完全なるチェックメイト』を観て、チェスの盤面をあまり見せる必要はないと確信しました。リーヴ・シュレイバーやトビー・マグワイアの顔を見れば、必要なことはすべて分かります。この映画を観て気づきました…トーナメントごとに個性を持たせて、ハーモンの立ち位置を反映させればいいんだ、と」

Entertainmentのインタビューより引用


『完全なるチェックメイト』予告


 ある戦いでは、相手が指し終わった瞬間に自分の手を指し、圧倒的実力差を誇示。またある戦いでは、一手指し終わっては相手の目をじっと見つめ、敵を品定めするような態度をとる。さらに別の戦いでは、一手指しては自席から離れ、また一手指しては自席から離れることを繰り返すことで、相手にプレッシャーを与える。あらゆる手管を使って、盤面上のドラマをエンターテインメントとして昇華してみせた。


 さらにスコット・フランクは、チェスのシーンに説得力を持たせるため、プロフェッショナルをコンサルタントに招聘した。そのうちの1人ブルース・パンドルフィーニは、ドラマで使用される何百ものチェス・ポジションを考案。奇妙な縁だが、原作小説を書いたウォルター・テヴィスに『クイーンズ・ギャンビット』というタイトルを提案したのは、パンドルフィーニだったという。



『クイーンズ・ギャンビット』PHIL BRAY/NETFLIX


 元チェス世界チャンピオンのギャリー・カスパロフは、1998年に実際に行われたアルシャク・ペトロシアンとウラジーミル・アコピアンの対局を参考にして、ベスの実力を表す場面を演出した。実はカスパロフは、ドラマの最大の強敵ボルコフ役をオファーされていたが、その申し出を断る代わりにコンサルタントに就任したのだという。


 『クイーンズ・ギャンビット』は、周到なリサーチと準備によって、チェス初心者はもちろん、チェス経験者をも熱狂させるドラマとなったのだ。



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