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『クイーンズ・ギャンビット』世界中を熱狂の渦に巻き込んだ、新世代のビルドゥングス・ロマン ※注!ネタバレ含みます。

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『クイーンズ・ギャンビット』世界中を熱狂の渦に巻き込んだ、新世代のビルドゥングス・ロマン ※注!ネタバレ含みます。

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エンドゲームのその先にある、可能性に満ちた未来



 各エピソードのタイトルは、チェスの序盤から終盤までの対局を表した「オープニング」、「エクスチェンジ」、「ダブルポーン」、「ミドルゲーム」、「フォーク」、「中断」、「エンドゲーム」。最も弱い駒のポーンが、(キングを除いて)最も強い駒のクイーンになるまでに7マスあることを考えれば、孤独で身寄りのない一人の少女が世界最強の女王になるまでを、7つのエピソードを通して描くのは非常に示唆的だ。『クイーンズ・ギャンビット』はチェスバトル・ドラマであると同時に、女性の社会的成功や経済的自立が困難だった1950〜60年代を舞台に、一人の女性の自立と成長、そしてエンパワーメントを描いたビルドゥングス・ロマンなのである。



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 エピソードを重ねるごとに、ハーモンのファッションが変化していくのもその表れだ。パリでは黒とベージュのドレス、モスクワでは格子柄のコート。まるでサナギが蝶に変わるかのごとく、国際的な評価が高まるにつれて、彼女が身に着けるものはよりきらびやかに、華やかになっていく。ラストシーンの真っ白なコート&帽子という出立ちは、彼女が白いクイーンになったことの証明だろう。


 このドラマが秀逸なのは、世界チャンピオンという究極の目標の、さらにその先を見据えていることだ。エピソード4「ミドルゲーム」で、ハーモンはソ連の天才少年ギレフと対戦。3年後には世界チャンピオンになると豪語する彼に向かって、ハーモンはこんな質問を問いかける。


「それで、その後は?」

「どういう意味?」

「16で世界一なら、残りの人生は何を?」

「よく分からない」



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 この質問は、ハーモン自身への問いかけでもあっただろう。「エンドゲーム」でアナウンサーが投げかける「彼女は次にどうするのか」という実況もまた、チェスの指手と彼女自身の人生という二重の意味が込められている。


 ラストシーンで彼女は、敵国ソ連の広場で名も無い老人たちとチェスに興じる。そこには、資本主義も共産主義もなく、勝利者も敗北者もいない。ただ、純粋にチェスを楽しむ者たちの姿があるだけだ。筆者の目には、彼女が羽織っている白いコートは、女王という暗喩だけでなく、あらゆる可能性を秘めた真っ白なキャンバスのように見える。面白いのはこれから。エンドゲームのその先には、可能性に満ちた未来が待っている。



文: 竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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『クイーンズ・ギャンビット』

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