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『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 中編

(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 中編

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『JFK』あらすじ

1963年、11月22日。テキサス州ダラスで第35代大統領のジョン・F・ケネディが凶弾で暗殺され、アメリカ全土を震撼させた。それから2時間もしないうちに、暗殺はオズワルドの単独犯行と発表されるが、そのオズワルドもやがて護送中に射殺される。ウォーレン委員会の一連の調査結果に疑問を抱いたニューオーリンズ州の地方検事ジム・ギャリソンは、真相を解明すべく独自の調査を開始する。だが、謎は謎を呼ぶ。深く、重く、手ごわいパズルに挑むジム・ギャリソン。それはアメリカ合衆国との長い戦いの始まりであり、愛する家族との軋みの始まりでもあった。



 映画『JFK』(91)を完成させるまでに、オリバー・ストーンがたどった苦難の道程を、多角的に検証。約25,000字の記事を前・中・後編の3回に分けて掲載する。本記事はその中編。


※前編はこちらから


Index


製作中止の危機とO・ストーンの強運



 ケネディ暗殺事件を映画にすることが公表された瞬間から、オリバー・ストーンは周囲への警戒を強めた。何らかの妨害が行われるのではないかと危惧したからだ。事務所が盗聴されていないか2回にわたってチェックし、車に乗るたびに尾行されていないか確認を怠らなかった。ワーナー・ブラザースで製作が決まってからは少しホッとしたものの、緊張が途切れることはなかったという。


 そして、遂に恐れていた事件が起きた。


 撮影開始から3日目のこと。ディーレイ・プラザでケネディ暗殺場面の撮影準備をしていると、大統領を狙撃した現場とされる教科書倉庫ビル6階の窓ガラスが突如として落下してきた。地上にはエキストラたちが30人ほど待機しており、直撃すれば絶命が避けられない巨大なガラスである。運良く避けられたとしても、地面に叩きつけられて粉砕したガラスは無数の鋭利な凶器となって近くにいる人々に襲いかかるだろう。


『JFK』(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 ストーンはその瞬間をこう回想する。「僕は離れたところにいた。突然、ビルの窓ガラスが吹き飛んで、エキストラの連中の頭上に落ちていくじゃないか。瞬間、誰もが“ケネディの呪いは続く”なんて新聞の見出しを思い浮かべたよ。“二十人のエキストラ死亡”とかね」(『週刊文春』92年3月12日号)ケヴィン・コスナーもその瞬間を、「あれはプロジェクト全体の息の根をとめかねない事件だった」(『オリバー・ストーン』)と証言する。


 幸い、地上のエキストラにガラスが突き刺さるまで数メートルというところで突風が吹いたことから、ガラスはふわりと地表に着地し、奇跡的に怪我人が出ることはなかった。偶然の落下なのか、作業中のスタッフのミスなのか、あるいは何らかの妨害だったのかは定かではない。


 そのとき、呆然と見ていたコスナーは、傍に居たストーンの顔を見た。ところが彼は軽くうなずくと、次の指示をスタッフに出すために走り始めた。幸運を感謝しない奴だとコスナーは思ったが、ストーンは落ち着き払ったフリをしていたものの、内心は「僕は思ったね。運が回ってきた、と。生き残れるぞ、完成にこぎつけるぞ」(『週刊文春』)と密かに喜びを噛み殺していたという。




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