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『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 後編

(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 後編

 

 映画『JFK』(91)を完成させるまでに、オリバー・ストーンがたどった苦難の道程を、多角的に検証。約25,000字の記事を前・中・後編の3回に分けて掲載する。本記事はその後編。


※前編はこちらから

※中編はこちらから


Index


公開とマスコミからの総攻撃



 1991年の12月に入ると、公開前の宣伝がマスコミを賑わせ始めた。それと同時に再び大手新聞各紙が猛烈なバッシングを開始した。公開日にあたる20日の「ニューヨーク・タイムズ」では特集が組まれ、オリバー・ストーンの寄稿をはじめ、政治ジャーナリストたちの批判を掲載した。ジョン・P・マッケンジーは「ストーン氏は主人公と同じくらい真実に対して軽率だ。検察官のでっち上げを実際の出来事として描き、自分自身のでっち上げを付け加える。(中略)この映画は表向き真実に捧げられているが、実際は不当な訴追を復活させ、あの検察官のように、途方もない陰謀説を助長するためにクレイ・ショーを利用しているのだ」(以下、表記がない記事は全て『JFK ケネディ暗殺の真相を追って』の再録より引用)と全面的に否定。


 25日付の同紙でも、ケネディ暗殺の瞬間に立ち会ったジャーナリストのトム・ウィッカーが、「主張されるような大規模かつ重大な陰謀計画が実行され、三十年間も隠蔽されるのが可能なら、どうして陰謀の首謀者ないし後継者たちはストーン氏にこの映画を作らせておいたのだろう? おそらく他の人々を殺害したように、彼らはなぜ氏を殺害しなかったのか?」と疑問を投げかけた。


 『JFK』に対する最大の批判ポイントとなったのは、史実との食い違いである。ジム・ギャリソンの実像、実際の裁判がどれだけ茶番にすぎなかったか、劇中で描かれた細部に至るまでの事実誤認を、政治ジャーナリストたちは書き立てた。「ロサンゼルス・タイムズ」(91年12月30日)は、「ひと儲けを狙う映画界の大物たちが、フィクションを事実として描き、死者だけでなく生きている人々の名誉をも毀損することは無責任で許しがたい」と記した。



(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 また、暗殺直後の解剖に立ち会った医師はこう嘆いてみせた。「遺体解剖のシーンは真実とまったくかけ離れている。自分の役をやっている俳優ときたら、今の自分よりも老けているんだ」(『JFK 暗殺の真実』)


 これらの批判に共通するのは、映画そのものは全く語られていないという点である。彼らは映画が史実通りかどうかという一点のみで語り、自身が体験した〈事実〉を語るばかりで、実話をもとにフィクションとして〈再構成〉された映画『JFK』を語ろうとしない。撮影中に脚本の第1稿を基に批判した「ワシントン・ポスト」と同じく、映画を観ていなくても書ける批判が大半である。


 しかし、ケネディ暗殺に限らず、自分が知る〈事実〉を題材に描いたフィクションに対して、人は寛容ではない。例えば、よく知る場所が映画に登場すると、位置関係が現実と異なっていた場合、妙に気になってしまうことがある。描かれているものが作りものであっても、その背景に現実が置かれると、リアルが持つ強い力に引きずられてしまう。


 リアリティ番組に実名で一般人が登場し、SNSで日常の様子が流れてくると、番組内の姿と現実の本人を別物として割り切られなくなる人々が続出する事例を思い出しても、『JFK』へのバッシングは起こるべくして起きたものだと言えよう。そして、本作を危険視する動きが本格化するようになっていった。



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