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『デトロイト』徹底再現という手段を用いて、史実を映画化する意味とは

『デトロイト』徹底再現という手段を用いて、史実を映画化する意味とは


異人種間の衝突が繰り返されてきたデトロイトという街



 劇中で描かれる1967年のデトロイト暴動や「アルジェ・モーテル事件」も、ヘイトや暴力という大きな問題を映し出すために選ばれたサンプルに過ぎない。同じ1967年の夏だけで、アメリカでは人種問題が引き金となった暴動が159回起きている。中でも最大規模だったのがニューアークとデトロイトだったのだ。混乱と混迷のこの時期には「Long Hot Summer(長くて暑い夏)」という呼び名まで付いている。




 また、デトロイトという街では、歴史的に見て何度も白人と黒人の衝突による暴動が起きている。古いものではまだリンカーンが大統領だった1863年。まさに南北戦争の最中で、デトロイトがあるミシガン州は奴隷制度のない“自由州”だったが、貧しい白人系移民たちは、南部の黒人奴隷が解放されると職を失うのではという疑念と恐怖を抱いていた。


 そんな状況の中でスペインとネイティブアメリカンを出自に持つ男性が白人少女の性的虐待の容疑で逮捕され(のちに少女は訴えを撤回した)、新聞が犯人を「黒人」と報道したために白人系市民が激怒。ギャングの先導もあって、黒人の住居や商店が襲撃されたのだ。


 第二次世界大戦中だった1943年にも、デトロイトで大きな暴動が起きている。混乱は三日間続き、600人と言われる死傷者と1,800人もの逮捕者を出した。大統領令で出動した州軍によって鎮圧されたことも『デトロイト』で描かれた1967年の暴動と似ている。デトロイトがあるアメリカ北部は、南部に比べれば比較的人種差別が少ないはずなのだが、戦争中という国内事情が人種間の対立を悪化させた。デトロイトはアメリカの自動車産業をほぼ独占する形で発展した大都市だが、第二次大戦で軍からの需要がさらに高まり、アメリカ南部から40万人という大量の移民が流れ込んだのだ。


 その結果デトロイトでは、もともと住んでいた白人系住民と、仕事を求めてやってきた南部からの黒人と白人という3つのコミュニティの間で緊張関係が高まっていく。この時の暴動では、白人、黒人ともに襲撃を受けたという噂が引き金となって双方に対する暴力行為が横行。ただし死傷者の75%は黒人だったと報告されている。


 つまり『デトロイト』で描かれる1967年の暴動と「アルジェ・モーテル事件」は、差別意識の強い南部人の大量流入というデトロイト特有の事情と、被差別民だった黒人たちの意識が公民権運動の高まりによって変革されていった時代の機運との、二つの要素がぶつかりあって生じたと言える。まさに人種間対立の火薬庫のような街だったのだ。




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