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『現金に体を張れ』キューブリックの才能を世界に知らしめたハリウッド・デビュー作

© 1956 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.© 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『現金に体を張れ』キューブリックの才能を世界に知らしめたハリウッド・デビュー作

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アマチュア映画作家からプロの映画作家へ



 『現金に体を張れ』の予算は、32万ドル。当時のB級映画の基準からしてもロー・バジェットだ。しかも映画スタジオのユナイテッド・アーティスツは、20万ドルしか出資してくれなかった。残りはすべてジェームズ・B・ハリスの自腹。彼は父親から借金をして、何とか12万ドルをかき集める。ナチュラル・ボーン・金持ちのハリスならではの芸当だろう。


 これまでは無名の役者を使って映画を撮ってきたキューブリックだが、さすがに今回ばかりはそういう訳にもいかず、わずかな予算から4万ドル分のギャラを切り崩して、スターリング・ヘイドンを主演に招聘する。ジョン・ヒューストン監督の『アスファルト・ジャングル』(50)でも強盗犯を演じていた彼に、現金強奪計画の主犯格ジョニー役はピッタリだった。



 『現金に体を張れ』© 1956 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.© 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.


 撮影監督には、サム・ペキンパーの『ワイルドバンチ』(69)や『ゲッタウェイ』(72)で知られるルシアン・バラードが起用される。これまではキューブリック自身が撮影を兼任していたが、ハリウッドのユニオン規定でプロの撮影監督を雇う必要があったからだ。しかし、まだ20代の若造のクセにやたら撮影に注文をつけてくるキューブリックとベテラン撮影監督はソリが合わず、現場の雰囲気は決して良好ではなかったという。


 脚本のアウトラインはキューブリックが書き、具体的なセリフはジム・トンプスンが仕上げた。ジム・トンプスンといえば、「グリフターズ」(63)など“暗黒小説の巨匠”として知られる推理作家。生前は仕事に恵まれず、脚本家としても活動を行なっていた。


 それまで、「仲間内でアマチュア映画を撮っては、映画会社に買い取ってもらう」という生活をしていたキューブリックは、初めてプロの映画作家としてプロのキャスト・スタッフを従え、『現金に体を張れ』を創り上げたのである。予算が少なすぎて、結果的にキューブリックはノーギャラでこの映画を撮る羽目になったのだが。




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