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『現金に体を張れ』キューブリックの才能を世界に知らしめたハリウッド・デビュー作

© 1956 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.© 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『現金に体を張れ』キューブリックの才能を世界に知らしめたハリウッド・デビュー作

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タランティーノにも影響を与えたノンリニアなストーリー展開



 『現金に体を張れ』が画期的だったのは、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』(92)や『 パルプ・フィクション』(94)にも影響を与えたという、ノンリニアなストーリー展開。あえて物語を直線的に語らず、時制を前後させながら立体的に状況を描いていく手法は、新鮮かつ斬新だった。強奪計画が行われる当日に絞って時系列を見ていこう。


■07:30 ジョージ(エリシャ・クック)とシェリー(マリー・ウィンザー)が朝食をとる。強奪計画の決行日が今日であるかどうかを執拗に確認するシェリー。カチカチと鳴り続ける時計の音が緊迫感を高める。


■05:00 標的となる馬のレッド・ライトニングにエサが与えられる。


■07:00 ジョニーが計画の出資者マーヴィン(ジェイ・C・フリッペン)の元を訪ねる。その後空港へ移動。


■08:15 ジョニーが花屋に寄ってからモーテルへ移動。マシンガンをピックアップする。


■08:45 ジョニー、バス停へ移動。ロッカーにマシンガンを隠す。


■09:20 ジョニー、マイク(ジョー・ソウヤー)のアパートへ移動。ロッカーのカギをポストに入れる。


■11:15 マイクが外出。ポストからカギを取り出す。


■11:29 マイク、バス停へ移動。ロッカーからマシンガンを取り出す。


■12:10 マイク、競馬場に到着。着替え用のロッカーにマシンガンを隠す。


■15:32 ランディー(テッド・デコルシア)が警察に電話。無線の調子がおかしいと嘘をつく。そのまま競馬場へ移動。


■14:30 モーリス(コーラ・クワリアーニ)がチェス場から競馬場に移動。


■16:23 モーリスが警官相手に大暴れし、逮捕される。


■11:40 ニッキー(ティモシー・キャリー)がライフルを持って駐車場へ移動。


■16:24 ニッキーが第7レースで本命馬のレッド・ライトニングを射殺。逃走しようとしたところを、警官に撃たれて死亡する。


■14:15 ジョニー、競馬場へ移動。


■16:23 ジョニー、モーリスが警官相手に暴れている隙を狙って、関係者専用入り口に潜入。マイクが隠したマシンガンをピックアップし、金庫に押し入る。



『現金に体を張れ』© 1956 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.© 2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.


 テスト試写では「話がゴチャゴチャして訳がわからん!」と一喝され、泣く泣くキューブリックが一直線で進行するように編集し直したところ、余計に話がこんがらがってしまった、という逸話もアリ。つまりノンリニアな時系列の方が、逆にわかりやすい構成になっていたのだ。いかに本作が緻密な計算なもとに作られていたかの証左だろう。


 もっとも「話を分かりやすくしたい」というスタジオの意向で、キューブリックの猛烈な反対にも関わらず、映画には余計なナレーションが追加されてしまったのだが。




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