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『フィッシャー・キング』 奇才テリー・ギリアムがこれまでの技法を封印して挑んだ心温まるヒューマンドラマ

(c)Photofest / Getty Images

『フィッシャー・キング』 奇才テリー・ギリアムがこれまでの技法を封印して挑んだ心温まるヒューマンドラマ

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リアルなNYの街並みを用いた、現代の大人たちのお伽話



 通常であれば、”穏やか”であることは、受け身に回ったり、日和ったりしたもの、あるいは悟りを開いた結果と捉えられがちだ。しかし、これまで散々闘い続ける生き方しか知らなかったギリアムにとっては、まさに真逆。これこそ新たな挑戦だった。


 ハリウッドのスタジオとは距離を置く。アメリカでは撮らない。自分の脚本じゃないと撮らない。そんな三原則を貫いていた当時のギリアムが、本作ではこの全てを破っている。そうすることで自身の”他の一面”を切り開きたかったのだ。



 そんな心境の変化の過程で、彼はある日、2本の脚本を同時に受け取る。一本には『アダムス・ファミリー』と題されていた。のちにバリー・ソネンフェルド監督によって大ヒットを記録する本作ゆえ、脚本のクオリティも高かったはず。だが、さすがに『バロン』の直後だっただけに、手の込んだ特撮を必要とするこの企画は、ギリアムの胸に全く響かなかった。そうやってため息まじりに手にした”もう一本の脚本”が彼を夢中にさせた。『フィッシャー・キング』との出会いである。


 それは、自分の軽はずみな発言が原因で悲劇を引き起こしてしまうラジオDJと、心に大きな傷を抱えて生きるホームレスの物語。


 彼お得意の”伝説”や”ファンタジー”の要素が散りばめられているとはいえ、これはあくまで現代劇だ。背景に広がるのは、いつもの手の込んだ美術セットではなく、当時のニューヨークの街並みそのもの。いわば”現代の大人たちのお伽話”がそこには広がっていた。




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