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『ヤクザと家族 The Family』移ろう時代、揺らがぬ絆。藤井道人、監督人生10年の到達点

(c)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

『ヤクザと家族 The Family』移ろう時代、揺らがぬ絆。藤井道人、監督人生10年の到達点

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「ヤクザ」×「法律」を描いた作品が隆盛



 『すばらしき世界』は、佐木隆三氏の著作「身分帳」を現代アレンジし、映画化したもの。人生のほとんどを刑務所の中で過ごした殺人犯の三上(役所広司)が、出所後に“カタギ”として生きようと奮闘するさまを追う。


 こちらの舞台も、暴対法の施行後の世界。生活保護受給者となった三上は、職に就こうとするがなかなかうまくいかない。システムからも世間からも、邪魔者扱いされてしまう。(余談だが、『ヤクザと家族 The Family』では「はじかれる側」である主人公の兄貴分を演じた北村有起哉が、こちらでは「はじく側」であるケースワーカーに扮しているのも面白い)


 三上が、アパートの階下に住むやくざ者と対決するシーンでは、相手が「やっとのことで“組抜け”出来たのに……」と暴力団との過去のかかわりを必死に隠そうとする。『ヤクザと家族 The Family』でも、「5年ルール(暴力団を“足抜け”しても、5年間は銀行口座を作ることができない等々の決まり)」が描かれ、市原隼人演じる山本の弟分が「兄貴から金は受け取れない」と食事の席で残酷なセリフを発する。


 『すばらしき世界』は、暴対法施行後に出所した男の人生を、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)的な「時代に置いて行かれた“市民”の物語」として扱っており、『ヤクザと家族 The Family』とは別個の物語ではあるのだが、扱っている題材が重なるところに、奇縁を感じさせる。



 『僕のヒーローアカデミア』は、「個性」と呼ばれる特殊能力を総人口の約8割が有している世界が舞台。犯罪抑制のため、犯罪者(ヴィラン)を取り締まる立場としてヒーローが資格制の職業として認可されている。主人公の緑谷出久はヒーロー志望の学生だが、彼とバトルを繰り広げる敵のひとり・治崎廻は、ヤクザの若頭だ。


 彼は、ヒーローの台頭によって弱体化した組の復興のため、「個性」を奪う武器をばらまくという計画を実行に移す。その根底にあるのは、天涯孤独だった自分を拾ってくれた組長(オヤジ)に報いたいという想いだ。この境遇は、『ヤクザと家族 The Family』の山本を彷彿とさせる。


 また、治崎の“家”である「死穢八斎會」は、「指定敵団体」の扱い。ヒーローによって摘発・解体が進んだ極道たちの中で、今日まで実刑を免れたものの、警察やヒーローに監視されながら細々と生きている存在だ。明示こそされていないものの、こういった細かな設定に、暴対法が影響していることは言うまでもない。



 もちろん、置いていかれる者としてのアウトローの物語を「ヤクザ」を媒介にして描くのは、これまでの作品でもあったように思う。ただ、そこに「法律」が絡むのは、上に挙げた作品群の大きな特徴だ。


 『ヤクザと家族 The Family』をはじめ、いま映画や漫画といったメディアで、このような動きが生まれているということ。「格差」が近年の映画のひとつのトレンドになり、「誹謗中傷」を盛り込んだ作品が台頭しているように、時代のにおいを敏感にとらえたこれらの作品が示したテーマが、今後さらに大きなうねりとなっていく可能性は、十分にあるだろう。




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