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『バタリアン』ダン・オバノン初監督作の勢いと、前時代的宣伝をあわせて堪能する

(c)Photofest / Getty Images

『バタリアン』ダン・オバノン初監督作の勢いと、前時代的宣伝をあわせて堪能する

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 「見世物小屋」をご存知だろうか?


 お祭りの神社の境内に建てられたテントの壁に「ヘビ娘」「タコ女」といった題目が、おどろおどろしいイラストと共に掲げられている。


 「寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!お代は見てのお帰りだい!」


 そんな威勢の良い掛け声に誘われて中に入ると、「娘」と言うには年嵩な女性が首の抜けた着物を振り乱し、ヘビを咥えたり、鼻から口に通したりといった、如何わしいショーが鑑賞できる。また、別室には「大イタチ」の看板が掲げられ、中に入ると血のりがベットリと塗られた大きな板が掲示されている。「大きな板と血」で「大イタチ」である。


 そんな前時代的な興行は、実は映画でも行われていた。


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『バタリアン』誕生までの紆余曲折



 ダン・オバノンは南カリフォルニア大学在学中に作った短編を元に、ジョン・カーペンターと映画『ダーク・スター』(74)を製作する。オバノンは脚本とビジュアル・エフェクト、そしてメイン・キャラクターの一人として出演もこなした。それを観た大学の先輩ジョージ・ルーカスはオバノンを『スター・ウォーズ』(77)に招集する。


 ミレニアム・ファルコン号がハイパードライブ航行に移る際の、放射状に伸びる光のグラフィックは、『ダーク・スター』で作ったアニメーションをブラッシュ・アップしたもので、オバノンが担当したものだ。



 そのままアニメーターになる道もあったが、監督になりたかったオバノンは、周囲からの勧めで、まずは脚本家としての活動を開始する。しかし、いきなりアレハンドロ・ホドロフスキー監督の『砂の惑星』に携わることになる。ご存知の通り企画は頓挫し、オバノンは収入源を絶たれ、友人宅での居候の身となってしまう。この時期にSFホラーの脚本「スター・ビースト」を書き、リドリー・スコット監督作として買い上げられる。これが『エイリアン』となり、作品の成功によりオバノンは晴れてSFとホラージャンルの脚本家としてキャリアを積んでいくこととなる。


 そんな中オバノンは、歴史的な傑作の正式な続編映画の脚色依頼を受ける。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)監督のジョージ・A・ロメロと脚本家ジョン・ルッソの間で「ゾンビ」の解釈に違いがあり、ロメロは自身の解釈で続く『ゾンビ』(78)を作り、ルッソは続編として小説「ザ・リターン・オブ・ザ・リビングデッド」を書き上げた。この小説を元にした企画が、『悪魔のいけにえ』(74)のトビー・フーパー監督作として動き出し、オバノンに脚色の依頼があったのだ。


 しかし、ほどなくフーパーは『スペース・バンパイア』(85)のために企画から離れてしまう。プロデューサーはオバノンに初監督作として企画を引き継ぐよう依頼する。オバノンはルッソの書いた原作をそのまま作ってしまうと、ロメロの作った『ゾンビ』世界を荒らすことになると思い、「全く別物」として構築し直して良いという条件であればと、監督を引き受ける。



 オバノンは『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)やマイケル・ジャクソンの「スリラー」MVのストーリーボードを手がけたプロダクション・デザイナー、ウィリアム・スタウトを引き入れ、世界観の構築を進める。スタウトはメキシコのグアナフアトにあるミイラ博物館のミイラや、ホラー漫画雑誌などを参照し、独自の「ゾンビ」をデザインしていった。


 2人が作り上げたゾンビは機敏に走りまわり、頭を破壊されても倒れないどころか、切り離された腕すらも動き続ける。知能もあり、喋ることも出来る。また、死んでいれば犬や猫でも、標本として真っ二つにされた剥製でさえ生き返る。そして、ゾンビたちが喰らいつこうと狙うのは脳みそだけ。こんな独自過ぎる「ゾンビ」が闊歩するオバノンの新生「ザ・リターン・オブ・ザ・リビングデッド」は、粋なセリフで幕を開ける。


 「『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を観たことがあるか? あの映画は実話を元にしているんだ。」


 『バタリアン』(85)の誕生である。




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