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『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

(C) 1987 KANOON

『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

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実際の村人たちを使って撮影された『友だちのうちはどこ?』



 『友だちのうちはどこ?』を見た人たちがまず驚き、疑問を抱くのは、いったいどうしたらこれほどみずみずしくリアルな子どもたちの表情や動きを映し出せるのか、ということ。ここには、大人がつくりだした偶像のような子どもは存在しない。ありのままの子どもたちの姿が、活発な運動が、克明に記録されている。子どもたちだけでない。村の風景も、そこで鳴りひびく音も、セットでつくりあげられた既存の映画とはまったく違うリアルさを、私たちに見せつける。


 映画の冒頭、青く塗られた教室のドアがまず映される。向こう側からは、子どもたちの騒ぐ賑やかな声が聞こえてくる。やがて先生がやってきて、生徒たちに宿題を見せるように命じるが、そのなかのひとりモハマッド=レザ・ネマツェデだけが、宿題のノートを忘れてきたことでひどく叱られてしまう。彼がノートを忘れたのはこれで三度目。次に忘れたら退学だぞ、と先生に叱られ、少年はわんわん泣きじゃくる。その様子を心配そうに眺めているのは、隣の席のアハマッド。やがて学校が終わり家に帰ったアハマッドは、鞄を開けて茫然とする。自分のノートと一緒に、モハマッド=レザのノートまで間違えて持ち帰ってしまったのだ。友だちを退学の危機から救うため、アハマッドはノートを抱え、慌てて走り出す。


『友だちのうちはどこ?』(C) 1987 KANOON


 物語は、アハマッドが住むコケル村、そしてモハマッド=レザが住むポシュテ村とで展開される。コケルからポシュテへ行くには、ジグザグにくねった道を登り、丘を超えていかなくてはいけない。アハマッドはなかなか友だちの家を見つけられず、何度も二つの村を行き来するはめになる。


 実際に撮影が行われたのは、イラン北東部のマスレ村。映画に登場するアハマッドの家も、村の憩い場であるチャイハネも、彼らが通う学校も、すべてマスレ村にもともとあるものが活用された。登場する人物たちも実際に村に住む人々で、演技は未経験。それどころか、多くの人は映画というものを見たことすら、人生で数えるくらいしかなかったという。


 とはいっても、すべては現実そのものというわけではない。脚本に合うよう街の風景にはその都度アレンジが加えられ、人々の関係も実際とは微妙に変えられている。今では有名になったジグザグ道も、撮影用にみんなで草を踏み固め、つくられたものだ。




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