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『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

(C) 1987 KANOON

『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

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数々の「子ども映画」をつくりあげたキアロスタミ 



 「子ども映画」というと、人はつい、ほのぼのとした、とか、愛らしい、といった紋切り型の形容詞を使いがち。でも子ども映画の名作と言われる『友だちのうちはどこ?』(87)には、「ほのぼの」とか「愛らしい」という言葉はまったく似合わない。たしかに一見すると平穏な、日常のできごとが描かれてはいる。でもここに登場するひとりの少年が生きるのは、実に過酷で、スリルに溢れた日常だ。


 大人たちは自分の仕事で手一杯で、子どもが懸命に投げかける言葉を聞いてもくれない。それどころか、ときに彼らを理不尽に叱りつけさえする。それでも少年はただひとつの目的のため、ひたむきに疾走しつづける。瞳は常に不安で揺れ動き、でもじっと前を見据えている。その疾走ぶりは、まるで世界を救うために走りつづけるアクションヒーローのようでもある。だからこそこの映画は、不思議な力を持って見る者を興奮させ、画面に釘付けにさせる。



 『友だちのうちはどこ?』は、イランを代表するアッバス・キアロスタミの長編4作目にして、彼の名を国内外に知らしめた作品でもある。キアロスタミは、最初に監督した短編『パンと裏通り』(70)から、その作品のなかでたびたび一般の子どもたちを起用し、素晴らしき「子ども映画」を生み出した。なかでもその演出の見事さが指摘されるのが、『友だちのうちはどこ?』だ。


 もともとグラフィックデザイナー兼絵本作家として活躍していたキアロスタミは、その縁で児童青少年知育協会に参加、アミール・ナデリらと共に映画部門を設立し、子どもの映画をつくることから監督としてのキャリアをスタートさせた。ただし本人は、当初から「子どものための映画」ではなく「子どもについての映画」を目指していた、と語っているけれど。


 彼が「子ども映画」を数多く手がけた背景には、イランの歴史的背景も影響している。彼自身が映画制作を始めたのは1970年からだが、1979年のイスラム革命以降、イラン映画界では検閲や文化的制約が厳しくなっていったという。キアロスタミをはじめ、多くのイランの映画監督が「子ども映画」を得意としたのは、子どもが主人公であれば政治的内容を含むことは少なく、検閲に引っかかることも避けられる、という面があったようだ。




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