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『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

(C) 1987 KANOON

『友だちのうちはどこ?』「素人俳優」を演出したキアロスタミの映画マジック

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人が演技をするとはどういうことか?



 『友だちのうちはどこ?』の撮影裏話を知るほど、人が演技をするとはどういうことか、という根源的な問いを突きつけられる。と同時に、映画のなかに「本物」を映しこむためには何が必要か、考え込んでしまう。ときに少年を実際に泣かせてしまう演出はたしかに残酷だ。それでは演技のできる子役を用意し、何も言わずに洗濯をくりかえしてくれるプロの俳優を用意していたらどうなっていたか。俳優たちは難なく村人役を演じたかもしれない。ただし実際にこの地方で使われる方言は話さず、メイクをし、きれいな衣装をつけて、素朴な村の生活、無邪気な子どもを演じただろう。それではまるで紋切り型、絵空事の再現だ。


 キアロスタミは、何よりも現実を映すことを追求しつづけた。「画面の裏側でいきいきと咲き誇っている人生が、キャメラの前にくると萎れ、枯れ、そして消えてしまう」ことの無念さを抱え、どうすれば人生そのものを映し出せるのかを常に考え、実践した。ただキャメラを向ければ現実が映るわけではない。だからこそトリックや工夫をこらし、またときに出演者に嘘をつき、嘘のなかから真実を見いだしていく。


(C) 1987 KANOON


 本作のあと、キアロスタミは『ホームワーク』(89)といういささか風変わりなドキュメンタリーを手がける。実際に学校に通う子どもたちをキャメラの前に立たせ、監督自らが宿題について質問を重ねていく。突然インタビューの対象にされた子どもたちは、不安からか、ときに泣き出してしまう。監督は、彼らが泣きやみ、自分の言葉で家庭環境について語れるようになるまで辛抱強く待ちつづける。そうして幾人もの子らの表情を映し出すうち、イランの教育制度が抱える問題点が徐々に見えてくる。すると最後には、あっと驚くような展開が訪れる。


 宿題に追われる子どもたちを描いた『ホームワーク』と『友だちのうちはどこ?』は、それぞれの方法で、ドキュメンタリーとフィクションの境目を軽々と超えていく。



【参考文献】

アッバス・キアロスタミ、キューマルス・プールアハマッド「そして映画はつづく」ショーレ・ゴルパリアン、土肥悦子訳、晶文社、1994年。

石坂健治ほか監修「アジア映画の森 新世紀の映画地図」作品社、2012年。

土肥悦子、山崎陽一編「奇跡の映画作家アッバス・キアロスタミユーロスペース、1993年。

土肥悦子編「アッバス・キアロスタミ 真実は現実と虚構のかなたに」ユーロスペース、1995年。



文:月永理絵

映画ライター、編集者。雑誌『映画横丁』編集人。『朝日新聞』『メトロポリターナ』『週刊文春』『i-D JAPAN』等で映画評やコラム、取材記事を執筆。〈映画酒場編集室〉名義で書籍、映画パンフレットの編集も手がける。WEB番組「活弁シネマ倶楽部」でMCを担当中。eigasakaba.net



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『友だちのうちはどこ?ニューマスター版』

DVD:3,800円(税抜)  Blu-ray:4,800円(税抜)

発売元:TCエンタテインメント

販売元:TCエンタテインメント

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