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『M★A★S★Hマッシュ』戦争なんて、軍隊なんて、くだらねえ! 名匠が放った反戦映画の傑作を紐解く

(c)Photofest / Getty Images

『M★A★S★Hマッシュ』戦争なんて、軍隊なんて、くだらねえ! 名匠が放った反戦映画の傑作を紐解く

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口にできないあの言葉が、ハリウッドのメジャー作品に初登場!



 アルトマンの演出は当時のハリウッドでは、とにかく型破りだった。とりわけ、アドリブを重視した点は注目に値する。役者から発せられるセリフの8割はアドリブだったと、デューク役のトム・スケリットは述懐する。役者同士のセリフが重なっても気にしない。なぜなら、それが現実にもしばし起こることだから。リアリティのあるつくりは、アルトマンが目指したひとつの地平でもあった。


 しかし、このやり方になじめない者もいた。主演のふたりーーホークアイ役のドナルド・サザーランドとトラッパー役のエリオット・グールドーーは最初は大いにとまどい、エージェントに監督を交代できないかと相談したほどだ。とりわけ、厳格な演劇界でキャリアを築き、脚本家が作ったセリフのひと言ひと言を大切にしてきたサザーランドには、アルトマンが狂っているとしか思えなかった。一方では、脚本家ラードナーは自身がつくったセリフをアルトマンにズタズタにされたことに腹を立てることになる。アドリブも脚本の変更も今となっては当たり前に行なわれていることだが、当時のハリウッドはそれほどまでに保守的だったのだ。



『M★A★S★H マッシュ』(c)Photofest / Getty Images


 逆にハリウッドに染まっていない者は、アルトマンのやり方をスンナリと受け入れる。オープニングクレジットを見て気づくのは、“Introducing”(=新人)と表された役者が多いこと。通常の作品では新人としてクレジットされるのはひとりかふたりだが、この映画ではなんと13人の役者にクレジットされている。その多くは、アルトマンがサンフランシスコの即興劇団からスカウトしてきた人材だ。彼らとともに演技をするうちに、サザーランドとグールドも、この自由なやり方を楽しむようになっていった。「彼らの間には、ある時点から、本物の戦友のような絆が見えるようになった」と、アルトマンは語っている。


 本作はハリウッドのメジャー作品で、初めて“ファック”というセリフが投入された作品としても知られている。クライマックスのアメリカンフットボールの試合のシーンで、それが聴ける。もちろん、これも役者のアドリブだ。





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