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『約束の宇宙(そら)』母と娘の決意を受け入れる“さよならの鏡像”

ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS

『約束の宇宙(そら)』母と娘の決意を受け入れる“さよならの鏡像”

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少女の視界



 宇宙は宇宙にして宇宙にあらず。これまで意欲的な作品を発表してきたアリス・ウィンクール監督は、長編第三作目となる『約束の宇宙(そら)』において、「宇宙」という言葉自体の意味を変容させていくことで、多くの英雄譚とは異なる「(彼女たちの)隠された物語」を紡いでいる。


 この隠された物語を描いたことについて、アリス・ウィンクールは次のように語っている。「女性宇宙飛行士は、自分の子供のことを語りたがりません。男性社会において、それは弱点と見なされてしまうのです」。ドキュメンタリー『マーキュリー13』(ヘザー・ウォルシュ、デヴィッド・シントン監督/2018年)で、その差別の歴史が描かれていたように、女性宇宙飛行士を職業として選択した者は、男性社会からの偏見と日々闘っている。


『約束の宇宙(そら)』予告


 また、『約束の宇宙(そら)』は、母サラ(エヴァ・グリーン)と娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)の絆を描いた映画であるのと同時に、サラとステラのさよならの決意を刻印する映画でもある。サラはやがて宇宙という風すら吹かない世界へ旅立っていく。サラの身体は宇宙の法則に浸食されてしまう。そのとき涙は液体から球体になるだろう。『約束の宇宙(そら)』は、地球に残された少女ステラの視線で描かれた、葬送の映画の様相を次第に帯びてくる。現実と地続きの彼岸である。


 このステラの視線に、かつてアリス・ウィンクールが共同脚本を手掛けた少女映画の傑作『裸足の季節』(ドゥニズ・ガムゼ・エルグヴァン監督/2015年)の主人公を重ねてもよいかもしれない。息苦しい世界から飛び出した五人姉妹の末っ子ラーレは、夕暮れ時の光を横顔に浴びながら、バスの車窓から見える新しい世界の景色に包まれる。少女の視界には将来への希望と同じくらいの大きな怯えが強く刻まれていた。





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