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『約束の宇宙(そら)』母と娘の決意を受け入れる“さよならの鏡像”

ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS

『約束の宇宙(そら)』母と娘の決意を受け入れる“さよならの鏡像”

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さよならの鏡像



 エヴァ・グリーンが実生活で母親ではないことを踏まえて、娘とどう接したらいいか分からないその微妙な距離感さえ映画に取り込んだと、アリス・ウィンクールは語っている。『ダーク・シャドウ』(12)から始まる、近年のティム・バートンとの一連のコラボ作品を始め、浮世離れした、超越的なキャラクターのイメージがついてきたエヴァ・グリーンの、新たな側面が披露されているのも本作の魅力だ。


 本作でのどうしていいか分からないドキュメントとは、娘のステラが抱える不安への、母親という人格を背負うことで生まれる強くも崩れやすい内面のゆらぎだ。アリス・ウィンクールはエヴァ・グリーンが備えている強さの資質をトレースしつつ、そこから零れ落ちる余白を画面に掬いとる。


 宇宙基地局を彷徨う”小さな宇宙飛行士”となったステラが、大きなモニターに再生される宇宙の映像の前で佇むシーンは、近い未来の遠い彼方に少女自身が体ごと入っていくような極めて美しいシーンだ。眠りにつく前に、「ママは私より先に死んじゃうの?」と質問するステラにとって、宇宙とは、恐怖を感じながらも、同時に親しみを感じられる彼岸の世界なのだろう。


 『約束の宇宙(そら)』ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS


 その意味において、サラとステラが防音ガラス越しに向き合う本作の素晴らしいショットは、母と娘がお互いの恐怖や不安を受け入れることで生まれた同じ高さの視点を獲得する。このとき、ステラは娘として甘えることを捨て、母親と同等の立場へと急激に成長していく。視点の交換が、エモーションの交換として表象されることで、母と娘の間に新しい鏡像関係が結ばれる。やがて少女が地上から見上げる宇宙(そら)は、クリアに澄み切っていくだろう。


 『約束の宇宙(そら)』は、母と娘の決意を、向かい合ったお互いの変化=進む道を受け入れる鏡像、さよならの鏡像として提示するのだ。



文:宮代大嗣(maplecat-eve)

映画批評。ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。



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作品情報を見る



『約束の宇宙(そら)』

2021 年 4 月 16 日(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー!

配給:ツイン

ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS

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