2021.04.20
御大イーストウッド、怪優マルコヴィッチのキャスティング
フランク・ホリガン役にはトミー・リー・ジョーンズが務めるというプランもあったが、その座を射止めたのは御大イーストウッド。
「脚本を読んで、とても良かったのでやってみようと思ったんだ。監督をするという話もあったが、『許されざる者』の直後だったので、冷静に判断した。私はたくさんのシーンに出るようだったし、どうしても監督は控えたいと言わせてもらって、いろいろ探した結果ウォルフガング・ペーターゼンを起用したんだ」( インタビュー記事より抜粋)
そう、『U・ボート』(81)や『ネバーエンディング・ストーリー』(84)で知られるドイツ人映画監督ウォルフガング・ペーターゼンを起用したのは、イーストウッド自身だったのである。かくしてこの作品は、イーストウッド的色合いの強い作品へと変貌していく。
『U・ボート』予告
もう一つ、重要なミッションがあった。暗殺犯ミッチ・リアリーのキャスティングだ。第一候補は、ロバート・デ・ニーロ。イーストウッド対デ・ニーロの対決と聞けば、映画ファンならずともワクワクしてしまうが、『ブロンクス物語』(93)のスケジュールの都合で「夢の共演」は叶わず。ロバート・デュバル、ジャック・ニコルソン、エド・ハリスというビッグ・ネームも考慮されたが、最終的にジョン・マルコヴィッチが抜擢される。
“怪優”マルコヴィッチはオファーを受諾すると、ミッチの孤独感を表現するために一ヶ月以上人目につかない隠遁生活を送る。ノーブルでありながら、内に狂気を秘めた暗殺者。彼は時間をかけて、ハンニバル・レクターに匹敵するようなキャラクターを創り上げていったのだ。