2021.04.20
常に権力の中枢に身を置くイーストウッド
『ザ・シークレット・サービス』において、イーストウッドが演じるフランク・ホリガンは、いつものイーストウッドだ。過去にイーストウッドが演じてきたキャラクターをまんまトレースしているんじゃないか、というくらいにとってもイーストウッドだ。データよりも己の勘を信じ、荒っぽい行動・言動で周囲を振り回す一匹狼。ピアノでジャズ・ナンバーを弾き、女性のハートをゲットしてしまうあたりは、実生活で実践していることじゃないか?と訝ってしまうほど。
そして、彼がシークレット・サービスという国家機関に所属していることも、極めてイーストウッド的。本作が公開された1993年までの間に、イーストウッドが映画で演じた役柄を、現代劇に絞って列記してみよう(西部劇などは除く)。
『マンハッタン無宿』(68)刑事
『恐怖のメロディ』(71)DJ
『ダーティハリー』(71)刑事
『サンダーボルト』(74)元犯罪者の牧師
『アイガー・サンクション』(75)スパイ
『ガントレット』(77)刑事
『ダーティファイター』(78)長距離トラック運転手
『アルカトラズからの脱出』(79)囚人
『ブロンコ・ビリー』(80)旅芸人一座の座長
『ファイヤーフォックス』(80)元米空軍パイロット
『センチメンタル・アドベンチャー』(82)カントリー歌手
『タイトロープ』(84)刑事
『シティヒート』(84)刑事
『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(86)海兵隊軍曹
『ピンク・キャデラック』(89)賞金稼ぎ
『ホワイトハンター ブラックハート』(90)映画監督
『ルーキー』(90)刑事
『パーフェクト ワールド』(93)刑事(警察署長)
さすがイーストウッド、やたら刑事率が高し。スパイや空軍パイロットなども加えれば、半分以上が国家機関所属だ。彼は常に権力の中枢に身を置いて、アメリカへの脅威に対峙してきたのである。だがそんなイーストウッド演じるフランクに対し、ミッチは「俺たちはお互いよく似てる。(中略)誠実で有能だが、信じる者に裏切られた」と言い切る。