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『セックスと嘘とビデオテープ』カメラを持った天使/悪魔が生み出す“出会いによる変化”

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『セックスと嘘とビデオテープ』カメラを持った天使/悪魔が生み出す“出会いによる変化”

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『セックスと嘘とビデオテープ』あらすじ

舞台はアメリカ郊外、バトン・ルージュ。この町に住むジョン(ピーター・ギャラガー)とアン(アンディ・マクダウェル)の夫婦は傍目には満ち足りた生活をしているように見えるものの、その実、欺瞞に満ちた空虚な関係にある。夫のジョンはアンの妹・シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と肉体関係を結んでおり、アンは夫とのセックスレスとうつ病に悩み、精神科に通う日々だ。そんな彼らのもとへ、ジョンの旧友であるグレアム(ジェームズ・スペイダー)がやってくる。彼の介入によって欺瞞に満ちた生活は崩れ、大きな変化がおとずれることになる。


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“異物”の混入によって展開する物語



 人は、誰か/何かとの出会いによって、絶えず変化するものだ。たとえば、「本」と出会うことでそれまで知らなかったことを知り、「映画」と出会うことで見たことのない風景を見て、「人」と出会うことで自身のなかに新たな感情が芽生えたりするものだろう。ページをめくるごとに、シーンが変わるごとに、誰かとすれ違うごとに、私たちは変化するのだ。


 『オーシャンズ』シリーズ(01-07)や『ローガン・ラッキー』(17)などで知られるスティーブン・ソダーバーグ監督作『セックスと嘘とビデオテープ』(89)は、言うなればこの“出会いによる変化”を描いた作品だと思う。タイトルにあるとおり、登場人物たちは「セックス」と「嘘」と「ビデオテープ」を介して関係し合うのだ。本作はソダーバーグ監督のデビュー作にして、第42回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した代表作のひとつであり、そして異色作である。


『セックスと嘘とビデオテープ』予告


 簡単にあらすじを記そう。舞台はアメリカ郊外、バトン・ルージュ。この町に住むジョン(ピーター・ギャラガー)とアン(アンディ・マクダウェル)の夫婦は傍目には満ち足りた生活をしているように見えるものの、その実、欺瞞に満ちた空虚な関係にある。夫のジョンはアンの妹・シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と肉体関係を結んでおり、アンは夫とのセックスレスとうつ病に悩み、精神科に通う日々だ。そんな彼らのもとへ、ジョンの旧友であるグレアム(ジェームズ・スペイダー)がやってくる。彼の介入によって欺瞞に満ちた生活は崩れ、大きな変化がおとずれることになるのだ。


 本作のおもな登場人物は、上記の4人である。ジョンを頂点とした三角関係にグレアムが加わったことにより、ある意味では保たれていたといえる“調和”とが崩れてしまうのだ。しかし、“崩れる”というとやや語弊がある。もちろん、ジョンとアンとシンシアの関係性はより乱れてしまうものの、三角関係が四角関係になったことによって、そこには新たな“関係性”が生まれる。三角形のすぐそばに新たな点を加えることによって、四角形になるのと同じことだ。つまりは変形するのである。


これはもちろん映画内の彼らの関係にかぎらず、私たちの現実社会での人間関係においてもとうぜん起きる現象だ。人と人との出会いは、こうして周囲に影響を及ぼしていく。そしてもちろん、そこにいる個人と個人は、関係性の「変形」が結果として現れるように、彼らも変化しているのだ。安定状態にあったアンたちの関係を変化させたグレアムは、さしあたり“異物”であり、これが混入することによって物語は展開していくことになる。




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