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『ファーザー』アンソニー・ホプキンスを2度目のオスカーに導いた、英仏の非凡な劇作家たち

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

『ファーザー』アンソニー・ホプキンスを2度目のオスカーに導いた、英仏の非凡な劇作家たち

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映画と演劇のルールの違い



 映画と舞台の両方を行き来してきた才人だが、60年代に舞台の仕事を選んだ理由については「イギリスにはかつては映画界と呼べる場所がなかったので、まずは演劇の世界に入り、舞台作品を手がけた。自分にとっては演劇の方が理解しやすかったからね。本当は若い頃から映画の脚本も書いていたが、映画と演劇の違いが最初は分かっていなかった」とかつてを振り返った。


 『キャリントン』は70年代後半にアメリカのハーバート・ロスが監督予定で映画化が進められたことがあり、ハンプトンも脚本を書いたが、実現しなかったそうだ(結局、映画化の実現までに20年近くかかっている)。映画と演劇の違いについてはこんな発言もしていた。


「両者はルールがまるで違うと思う。映画は演劇のようにすべてを言葉で説明する必要がない。そこがまず違う。そして、舞台ではひとつの場面をずうっと見せることで盛り上がりが生まれるが、映画の場合は30から40くらいの場面を重ねることで盛り上がっていく」


 かつては英国の革新的な演劇の聖地、ロイヤル・コート・シアター専属の作家として活動していたこともあり、多くの才能ある劇作家や演出家たちに遭遇してきた(映画『めぐりあう時間たち』(02)などの脚本を書いた劇作家デイヴィッド・ヘアが彼の助手だった時期があるそうだ)。



『ファーザー』© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020


 演劇界では50年以上のキャリアを誇り、鋭い審美眼を持つハンプトンがフランスで発見した新たな才能が『ファーザー』のフロリアン・ゼレールで、かつてのハンプトン同様、40代で映画監督デビューを果たすことになった。前述のサイト、ニュース・コム・AUの中で「撮影3日目に撮影現場に行ったら、彼が新人監督だなんて信じられないはずだ。映画監督としても本当にすばらしかった」とハンプトンは彼の実力を絶賛。


 監督は最初からアンソニー・ホプキンスを主役に望んでいたが、ハンプトンはかつて脚本家としてホプキンスの2本の主演作、『人形の家』(73、日本未公開、イブセン原作)と“The Good Father”(85、監督マイク・ニューウェル)を執筆していて、そのコネクションも今回の映画作りに有利に働いた。「今回の映画でホプキンスとの友情を取り戻すことになった。彼はすぐにゼレールのことも気にいったようだ」とハンプトンは語る。


 『ファーザー』はハンプトン、ゼレール、ホプキンスの幸運な出会いによって生まれた作品であるが、最終的にはハンプトンとゼレールがオスカーの脚色賞、ホプキンスは主演男優賞受賞となり、3人の作品への思いも報われた。



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