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『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』創造的な挑発を持つ“永遠の人物”

© PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019

『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』創造的な挑発を持つ“永遠の人物”

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本人の生きざまが重なるヒース・レジャー版



 次にネッドを演じたのはヒース・レジャー。彼自身は28歳で他界したが、映画『ケリー・ザ・ギャング』(03)に出演したのは23歳のときだ。


 こちらはロバート・ドリューの91年の小説“Our Sunshine”が原作で、ホアキン・フェニックス主演の『戦争のはじめかた』(01)などを監督しているオーストラリアの監督、グレゴール・ジョーダンの監督作。キャストがけっこう豪華で、ケリー・ギャングのひとりとなるジョー・バーン役をオーランド・ブルーム、ネッドの恋人役をナオミ・ワッツ(ヒースの恋人だったこともある)、ネッドを追い詰める警部にジェフリー・ラッシュ、ネッドの友人役にジョエル・エガートン(当時は無名)といったメンバーだ。


『ケリー・ザ・ギャング』予告


 ただ、日本では劇場公開されず、DVD公開となった。ヒースが生きている時に見た時は普通の感覚で見てしまったが、他界した今、再見してみると、若くして亡くなったネッドとヒース自身が重なって見え、なんとも切ない。ミック・ジャガーのネッドはどこか牧歌的なユーモアとしゃれっけがあったが、こちらのネッドはなんとも悲劇的に描かれる。アイルランドから流れてきた貧しい移民の息子という設定ゆえ、迫害を受け、悲劇へと突き進む。


 ヒースは全身に哀感を漂わせ、ナオミ・ワッツ扮する美しい人妻との許されぬ恋の描写は、メロドラマ調になっている。ヒースの演技は、後の代表作『ブロークバック・マウンテン』(05)に通じるところもあり、武骨さと優しさがミックスされた演技を見せる。役にのめり込むことで知られたヒースが、オーストラリアの伝説の人物を演じた、という点では貴重な作品かもしれない。


 劇中、優しいネッドは大衆に愛され、死刑をやめるように3万人以上の署名があったにもかかわらず、彼は処刑される。そんな設定が納得できる演技をヒースは見せている。公開時、オーストラリア映画協会賞では監督賞、主演男優賞、助演男優賞(オーランド・ブルーム)等、9部門で候補となり、2部門(プロダクション・デザイン、衣装)受賞。ドラマとしてもうひとつ奥行きがない気もするが、出演陣が豪華だし、分かりやすい構成で、何よりもヒース=ネッドの悲劇性が印象に残る作りとなっている。





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