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『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ヴァンパイアを通じて描かれる、ジム・ジャームッシュとその世界

(c)2013 Wrongway Inc., Recorded Picture Company Ltd., Pandora Film, Le Pacte & Faliro House Productions Ltd. All Rights Reserved. 

『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ヴァンパイアを通じて描かれる、ジム・ジャームッシュとその世界

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ジャームッシュが描くヴァンパイアの宇宙



 『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(13)は、ジム・ジャームッシュ作品の中では、つい埋もれがちな1作かもしれない。主人公がヴァンパイアという点が異色で、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)や『ダウン・バイ・ロー』(86)、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)などの軽妙な感じを期待して見ると違和感を抱くかもしれない。


 また、ヴァンパイア・ムービーということで、恐怖や官能性を持ったホラータッチの映画を期待した人にもピンとこないだろう。物語は淡々としていて、テンポもゆったり。表面上のストーリーだけを追うと、退屈に感じるかもしれない。では、どう楽しめばいいのだろう?


 この映画を見ていて、1番深く突き刺さってくるのは、ヴァンパイアの恋人たち、アダムとイヴの抱える憂いだろう。彼らは何世紀もの間、ヴァンパイアとして生きている。その間、ペストや洪水、宗教裁判など、さまざまな世界の惨劇を見ていて、それを乗り越えてきた。しかし、そんな彼らは今の時代に失望している。現代の危機にどう立ち向かうのか? そんなメッセージに共感できる人には、忘れがたい作品になるだろう。


『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』予告


 主人公の恋人たちを演じるのは英国出身のティルダ・スウィントンとトム・ヒドルストン。ヒドルストン演じるアダムは謎めいたミュージシャンで、今の時代に深く失望していて、周囲の人々を“ゾンビ”と呼ぶ。これは比喩で、彼から見ると人間たちは、“生気を失ったゾンビ”のように見えるということだろう。人間はいろいろなものを破壊し、ガリレオのような有能な科学者たちにひどい仕打ちもしてきた。彼はゾンビこと、人間を信頼していない。


 一方、彼のパートナーのイヴはもっと楽観的で、「ゾンビが犯した歴史上の蛮行をあげていたら、夜が明けちゃう」とアダムに言い、今の時代に失望しつつも、何とか折り合いをつけながら生きようとする。「自分の心に囚われるのは時間のムダ。困難を乗り越え、自然を味わい、他者を思いやり、友情をはぐくむ。それとダンスも必要」と彼女は言う。


 アダムが抱える憂鬱は、現代に対して監督のジャームッシュが感じるイラ立ちや失望、悲しみではないだろうか。ヴァンパイアという設定は、ひとつの“比喩”みたいなもので、長く(監督として)生きてしまったジャームッシュが今の時代に対して抱く複雑な思いを託したキャラクターになっている。





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