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『ロリータ』100%キューブリック印、いまだに議論を呼ぶ問題作

(c)Photofest / Getty Images

『ロリータ』100%キューブリック印、いまだに議論を呼ぶ問題作

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名だたる俳優にことごとく「ノー」を突きつけられた、ハンバート役



 元々ハンバート・ハンバート役には、’30〜’40年代にアクション・スターとして鳴らしたエロール・フリンが考えられていた。そしてロリータ役の候補には、彼の実生活の恋人だったビヴァリー・アードランド。フリンとは30歳以上の歳の差カップルである。『ロリータ』の映画化にはピッタリな二人ではないか!


 しかしエロール・フリンが心臓発作のため50歳で急死。17歳だったアードランドは“財産目当ての魔性の女”というレッテルを貼られてしまい、大バッシングを受けて映画出演どころではなくなってしまう。ちなみにこの顛末は『ラスト・スキャンダル~あるハリウッドスターの禁じられた情事~』(13)というタイトルで映画化されているので、興味のある方はチェックしてみてください。


 不慮の死で主役を失い、映画のキャスティングは難航した。そりゃそうだろう。原作が文学的な評価を受けていたとはいえ、少女に熱をあげる中年男を演じるなんぞ、リスクがデカすぎる。大スターのケーリー・グラントにオファーするも、もちろん答えはノー。『ガス燈』(44)で知られるフランス人俳優シャルル・ボワイエが役を引き受けるも、数週間後に理由も告げず辞退。『旅路』(58)でアカデミー主演男優賞を受賞した人気俳優デヴィッド・ニーヴンも、一度は受諾したもののスポンサーの反対を恐れて辞退。その他にもピーター・ユスチノフ、ローレンス・オリヴィエなど、名だたる俳優にはことごとく「ノー」を突きつけられてしまった。



『ロリータ』© 1961 Turner Entertainment Co. All rights reserved.


 そんな中、ハンバート役を演じることになったのはジェームズ・メイソン。『スタア誕生』(54)や『北北西に進路を取れ』(59)で知られる名優である。最初はブロードウェイの仕事があると断っていたが、最終的にはリスクの高い仕事を引き受けることに。キューブリックは彼を評してこんなコメントを残している。


 「彼はハンサムだけど傷つきやすく、ロマンチストでもある。もちろんハンバートもそうで、洗練された皮肉屋の皮をかぶっていて、卑屈さの下にひどくロマンチストでセンチメンタルなところがある」(スタンリー・キューブリックへのインタビューより引用)


 『ロリータ』以降、ジェームズ・メイソンとスタンリー・キューブリックが一緒に映画を作ることはなかったが、二人は良き友人となり、『シャイニング』(80)の撮影現場にはメイソンが訪れている。




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