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『ロリータ』100%キューブリック印、いまだに議論を呼ぶ問題作

(c)Photofest / Getty Images

『ロリータ』100%キューブリック印、いまだに議論を呼ぶ問題作

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現代ポップカルチャーへの影響



 この作品で初めて、製作の全権を司ることになったキューブリック。だが案の定というべきか、当然というべきか、スタッフとは衝突が絶えなかった。


 例えば、撮影監督のオズワルド・モリス。英国アカデミー賞撮影賞を3年連続で受賞している名匠だが、撮影中にキューブリックと大喧嘩を繰り広げている。まだ公開前だったにも関わらず、映画のワンシーンが新聞に無断で掲載されてしまい、キューブリックが大激怒。フィルムの管理責任者モリスを猛烈に非難したのだが、後になってこれがフィルム処理室のアシスタントの仕業だったことが判明。だがキューブリックは特に謝罪することもなく、頭にきたモリスは二度とキューブリックとは仕事をしないことを誓った。


 音楽を担当するはずだったバーナード・ハーマンも、ボブ・ハリスが作曲した「ロリータのテーマ」の使わなければならないことに嫌気がさし、結局降板。脚本は原作者のウラジーミル・ナボコフ自身が手がけたが、残念ながらその出来はキューブリックのお眼鏡に叶うものではなかったようで、大幅に書き直されてしまった。だがナボコフは、自分の書いた脚本のほとんどが削除されていることを知って落胆しつつも、完成した映画自体は素晴らしいとスタッフやキャストに賛辞を送ったという。ナボコフ、キューブリックと違ってめっちゃ大人な対応!



『ロリータ』© 1961 Turner Entertainment Co. All rights reserved.


 かくして完成した『ロリータ』は、1962年に公開された作品の中で12番目に高い興行収入を記録。映画研究家スティーヴン・ジェイ・シュナイダーによる書籍「死ぬまでに観たい1001本の映画」の中の1本にも選出されるなど、今日に到るまで高い評価を受けている。ロックバンドのポリスが、「Don't Stand So Close to Me」という曲で「まるでナボコフのあの本に出てくる老人のようだ」と歌ったり、ラナ・デル・レイがアルバム「Born to Die」のボーナス・トラックで「Lolita」というトラックを収録していたり、ケイティ・ペリーのデビュー・アルバム「One of the Boys」のジャケが思いっきり『ロリータ』を参照していたり、ポップカルチャーへの影響も計り知れない。


 かつて、カトリック矯風団(Catholic Legion of Decency)から「『ロリータ』を見ることは罪である」と判断された本作は、そのセンセーショナルな内容によって、いまだに議論を呼ぶ問題作であり続けている。



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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作品情報を見る




『ロリータ』

ブルーレイ 2,619円(税込)/特別版DVD 1,572円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 1961 Turner Entertainment Co. All rights reserved.

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