© 1999 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.
『ディープ・ブルー』サミュエル・L・ジャクソンの衝撃的かつ最高なシーンはいかにして生まれたか ※注!ネタバレ含みます。
70年代の名作『エイリアン』が与えた影響とは?
さらに、海上研究所でサメとの死闘を繰り広げるメンバーの人物構成は、これまた『ジョーズ』に並ぶ70年代の伝説的な作品『エイリアン』(79)のキャラクター設定を参考にしているのだとか。
なるほどそう言われると、かの宇宙船ノストロモ号の乗組員も決して有名とは言えない俳優ばかりで占められ、いちばん名の知られているのは船長役のトム・スケリットくらいのもの(シガニー・ウィーバーもまだ新人だった)。経験豊富でピンチの時に頼りになるであろう船長のキャラ設定は、確かに本作のサミュエル演じる役柄と通じるところがある。彼を除いた他の面々の知名度がほぼ横並びだからこそ、誰が生き残るか全く予測のつかないスリリングな状況が生まれたのは明らかだ。
『ディープ・ブルー』© 1999 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.
思えば、サミュエル・L・ジャクソンほど長らく似たタイプの役を演じ、観客を魅了し続ける俳優は珍しい。その上、本作のようなセルフ・パロディ的とも言えるアイディアを「それは面白い!乗った!」と快諾してしまえるところも最高。彼は状況をきちんと見極め、観客が望むことと自分自身が貫きたいことのバランスを取るのに長けた俳優と言えそうだ。
ちなみに、本作の撮影中、彼は自分の出番がないことを知ると、頻繁に近隣のゴルフ場へ出かけていたそうだ(それも出演の条件に入っていた)。そしてDVDの音声解説に出演して撮影裏話を披露する彼もまた、出番を終えると途中であっさり「私の出番はこれにておしまい」と退場してしまう。本当に無駄が嫌いというか、不在であっても逆に存在感が際立つというか。
結局、何をやっても全てをかっさらっていってしまう。これぞサミュエルがサミュエルたるゆえん。やはり彼ほど特殊で特別なハリウッド俳優は他にいないのである。
*1)サミュエルの大演説:一説では、この場面はセリフが7ページも続く極めて冗長なもので、サミュエル自身、「頼むから早く殺してくれ」と望んでいたとか。結果、テスト試写を観た関係者の意見も考慮した上で、予定よりもかなり早く、食い気味のタイミングでサミュエルを葬り去ることしたところ、これが抜群にうまくハマったとのこと。
参考資料
『ディープ・ブルー』DVD音声解説(販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ)
https://www.mentalfloss.com/article/58020/17-fun-facts-about-deep-blue-sea
https://www.avclub.com/samuel-l-jackson-hated-his-big-deep-blue-sea-speech-w-1836824733
https://beforesandafters.com/2019/07/24/deep-blue-sea-samuel-l-jackson-sharks-death/
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
『ディープ・ブルー』
ブルーレイ 2,619円(税込)/DVD特別版 1,572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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