(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC
『15時17分、パリ行き』イーストウッドが作り続ける「教育」映画の最新アップデート
2018.03.16
ズブの素人を映画に起用した真意とは
白人の老人とアジア系少数民族の少年の交流を描いた『グラントリノ』。一見何の繋がりも見いだせない2人を作品の中でつないだ紐は、「人としていかに良く生きるか」という「教え」だった。そのような普遍的な教えの「伝承」に人種も国籍も関係ないと、イーストウッドは役者としてのキャリアを締めくくる作品で高らかに歌い上げたのだ。
そして彼は最新作で玄人も素人も関係ないとばかりに、3人の青年を作品に迎え入れる。それは〈プロとアマチュア〉、〈物語と現実〉、〈スクリーンとそれを見つめる観客〉、それらの壁を取り払い新たな地平を切り開こうとするイーストウッドの新たな「伝承」=メッセージである。3人の青年に取材するうちに、役者が演じるより本人たちが演じる方が良いと判断したと語るイーストウッド。初めて映画の現場を体験した3人の青年は、今後役者として活動することも視野にいれているという。イーストウッドはまた新たな弟子の教育に成功したのだろう。
『15時17分、パリ行き』(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC
「映画の可能性はプロの造り手が独占できるものではない、物語を語り演じる動機は私たち一人一人の中にあり、その可能性と恐れず向き合え。」
「師匠」であるイーストウッドはシワガレ声で「弟子」である私たち映画ファンにそう語りかけているかのように思える。
文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。
『15時17分、パリ行き』
配給:ワーナー・ブラザース映画
3月1日(木)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC
公式サイト: 1517toparis.jp
※2018年3月記事掲載時の情報です。