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『最後の決闘裁判』これぞリドリー・スコット!史劇・ミステリー・対決・強いヒロインの集大成

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『最後の決闘裁判』これぞリドリー・スコット!史劇・ミステリー・対決・強いヒロインの集大成

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史劇とミステリー、監督の好きなふたつのジャンルの合体



 今回の新作はいかにもスコット好みの題材だが、彼の発案ではなく、主演・脚本・製作もかねているマット・デイモンから持ち込まれた企画だった。Deadline.Comに掲載されたスコットの発言によれば、「前に決闘の映画を撮っているけど、別の決闘映画の企画があるからよかったら脚本を読んでほしい」とデイモンから連絡があったという。『オデッセイ』(15)で、彼とのコラボが気にいっていたスコットは「断る理由なんてないと思った」そうだ。そして、6週間後に脚本が送られてきて、スコットは驚いたという。「こういう話が出ても10年くらい何も進展しないことがあるからね」。こうして異例のスピードで企画がまとまった。


 デビュー作の『デュエリスト』は、ナポレオン統治下の時代を生きるふたりの軍人が15年間に渡って戦いを続ける物語だ。主演はキース・キャラダインとハーヴェイ・カイテル。キャラダイン扮する紳士風の軍人と、見るからに粘着質の人物(カイテル)。やがて決闘を続けることが、ふたりの軍人の生きる証となり、動物的な本能をふたりは確認しあう。憎しみあっているはずなのに、実はお互いを必要としあっているのだろう。矛盾した感情をはらんだ男同士の関係が、ヨーロッパ絵画のように格調高くて美しい映像の中で描かれたパワフルな作品だった(個人的にはスコットの最高傑作の1本だと思う)。


『デュエリスト』予告


 その後は『グラディエイター』で古代ローマの戦士の対決を描いてオスカーを受賞。この作品の成功後、史劇ものが彼のレパートリーのひとつとなり、『キングダム・オブ・ヘブン』(05)、『ロビン・フッド』(10)、『エクソダス:神と王』(14)等を手掛けた。史劇は、この監督の資質であるスケールの大きな視覚センスと、ヨーロッパ監督としての歴史的な興味が生かせるジャンルなのだろう。


 ただ、今回はこれまでの路線と比べると、かなりひねった構成になっている。 スコットは実は“ミステリー監督”としての側面も持っていて、『誰かに見られてる』(87)、『ハンニバル』(01)、『悪の法則』(13)、『ゲティ家の身代金』(17)他、ミステリー/サスペンス路線も手掛けてきた。


 今回の『最後の決闘裁判』では、そんな路線も生かされる。映画は3章仕立てで、1章目は中世フランスの騎士、ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)、第2章は従騎士であるジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)、3章目はカルージュの妻、マルグリット(ジョディ・カマー)の視点で綴られる。いわゆる“羅生門スタイル”で構成されていて、事件に対する3人の異なる解釈を見せることで、ミステリー映画としてのおもしろさも生まれている



『最後の決闘裁判』© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.


 物語のカギとなるのはマルグリットの強姦事件。彼女はカルージュという夫がいる身でありながら、かつては彼の友人でもあったル・グリに強姦される。ル・グリは無実を主張しているが、マルグリットが自分の正当性を訴え、最終的には彼女の夫がル・グリと戦うことになる。彼が勝てば妻の不貞への疑惑も晴らせるが、負ければ命も名誉も失い、マルグリットは火あぶりの刑となる。まさに夫婦のすべてを賭けた真剣勝負が待っているのだ。


 そんな主人公3人のそれぞれの視点を見せるため、『羅生門』(50)が引用されることになった。この黒澤明の監督作では武士(森雅之)の妻(京マチ子)が見知らぬ盗賊(三船敏郎)に乱暴されるが、その事件の顛末が3つの異なる視点で描かれ、新しいストーリーテリングのスタイルを作り上げた。スコットはもともと黒澤監督を尊敬していたそうだが、今回はこの名作の構成を取り入れることで心理ミステリーの要素も入り、彼の史劇路線としては新しい展開を見せる。


 運命の決闘へと至る過程が、男ふたりの葛藤を通じて語られる。主人公のカルージュは名門の出身だが、教養はなく、世渡りもうまくない。どこか陰気なところもあり、嫉妬深い性格だ。一方、ル・グリには家名はないが、聖職者としての教養があり、処世術もうまく、女性にもてる。性格が異なるからこそ、かつては親しかったはずのふたりが名誉や出世、土地や金銭の問題を通じて、やがては袂を分かち、強姦事件を経て決闘に至る。それぞれの問題を積み重ねることで、ふたりの戦いがよりドラマティックに盛り上がる構成となっている。




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