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『最後の決闘裁判』これぞリドリー・スコット!史劇・ミステリー・対決・強いヒロインの集大成

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『最後の決闘裁判』これぞリドリー・スコット!史劇・ミステリー・対決・強いヒロインの集大成

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スコットが描く強い女たち



 史劇路線、ミステリー路線に加え、別のスコット映画の要素も入っている。史劇路線の主役はこれまで主に男性だったが、今回は女性も目立つ展開になっている。


 スコットはもともと強い女が好きで、70年代の『エイリアン』のシガニー・ウィーバー扮するタフなヒロイン像は、ハリウッドの“戦う女性像”の原点にもなった。当時はフェミニズム運動が映画界でも台頭し始め、ジェーン・フォンダなどに代表される自立する女性像が市民権を得ていたが、そんな流れの中で登場した『エイリアン』のヒロインは、頭も切れるし肉体もタフ。当時の社会情勢を反映した革新的な女性像だった(ただ、ウィーバーに、その後、取材したら、当時の製作者たちにはフェミニズム的な意図はまったくなかった、と言っていた)


 90年代には、銃を持った女たちが無法者となる『テルマ&ルイーズ』(91)、女が男だけの軍隊に入る『G.I.ジェーン』(97)等でも、タフなヒロイン像をスコットは描いていた。そして、今回の映画にもその路線はひきつがれている。14世紀に実際に起きた強姦事件で、自分の正当性を訴えるマルグリットは、♯ME TOO運動などが広がった現代の女性像にもつながるヒロイン像となっている。



『最後の決闘裁判』© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.


 BBCアメリカのテレビシリーズ「キリング・イヴ/Killing Eve」(18~)で、エミー賞を獲得している英国の新鋭女優、ジョディ・カマーは、キリリとした表情が印象的な(いかにもスコット好みの)女優。演技もしっかりしているが、何よりもカメラ映りがよくて、ちょっとくすんだ中世フランスの映像にすごく映える。黙ってたたずんでいるだけで絵になるので、彼女が強い決意を秘めて、夫の決闘裁判に立ち会う場面がすごく印象に残る。 


 思えば『テルマ&ルイーズ』の、スーザン・サランドン演じるヒロインにも強姦された過去があり、友人(ジーナ・デイヴィス)が男にレイプされそうになった時、彼女は思わず銃の引き金を引いてしまう。そう考えると今回の映画のヒロインは、かつてのスコット映画の延長戦上にあると考えてもいいのだろう。けっして泣き寝入りせず、自分の正当性を主張する意志の強いヒロイン。そんなマルグリットを得ることで、実は女性の存在が輝く史劇にもなっている。


 また、ノンフィクションである原作の中のマルグリットは、もうひとつ、人物像がはっきり見えないところがあるが、映画では、本を読むのが好きな教養ある人物という解釈になっていて、今の女性も共感しやすいキャラクターだ。カマー自身は「そんな彼女に声を与えるのが自分の仕事だと思った」とBBCラジオのインタビューで語っている。




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