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『センチメンタル・アドベンチャー』巨匠イーストウッドの早すぎた秀作 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『センチメンタル・アドベンチャー』巨匠イーストウッドの早すぎた秀作 ※注!ネタバレ含みます。

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イーストウッド、カントリー・ミュージックを歌う



 舞台は1930年代、大恐慌時代のアメリカ。イーストウッドがふんするのは、うだつの上がらない中年のカントリー歌手レッド。長年の放蕩生活で肺を病み健康状態もままならない彼は、旅の途中、オクラホマで農場を営んでいた姉夫婦を頼る。そこで再会したのが、ミドルティーンに成長していた甥っ子ホイット。自由な生活に憧れ、車の運転もできる彼は、レッドの世話係として旅に同行することに。かくして彼らは、レッドが出場を切望しているカントリー音楽の祭典を目指してナッシュビルへ向かう……。


 まず、注目したいのはイーストウッドが歌手を演じ、みずから歌もこなしていること。これだけでも当時のアクション俳優のイメージから程遠いことがうかがえる。今となっては有名な話だが、実はイーストウッドは昔から音楽への造詣が深い。この後、ジャズサックス奏者チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』(88)や、TV用シリーズのために撮ったドキュメンタリー『ピアノ・ブルース』(03)など音楽にまつわる映画を手がけていることからも、それは明らかだ。しかも、彼にはTVシリーズ『ローハイド』に出演していた1960年代、同作の絡みで歌をレコーディングした経験があった。本作でのイーストウッドの歌声は、線の細さはあるものの、歌いまわしが絶妙で、渋みも感じさせる。



『センチメンタル・アドベンチャー』(c)Photofest / Getty Images


 物語に合ったカントリー・ミュージックを取り入れるため、イーストウッドは音楽プロデューサー、スナッフ・ギャレットを音楽スーパーバイザ―に起用。ギャレットは1960年代前半に、リバティ・レコードでボビー・ヴィーやジョニー・バーネットのプロデューサーとして辣腕を振るい、ポップミュージックの世界に足跡を残した腕利き。日本では大滝詠一がラジオ番組で紹介したことで、その名を知られるようになった。そんなスナッフの手腕を認めたイーストウッドは『ダーティファイター』(78)で彼を映画の世界に引き入れ、『ブロンコ・ビリー』(80)『ダーティファイター/燃えよ鉄拳』(80)といったコメディ色の強い作品で組み、本作は4度目のタッグとなった。





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