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『ニューヨーク1997』SFアクションの傑作を生みだしたジョン・カーペンターの淡白さ

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『ニューヨーク1997』SFアクションの傑作を生みだしたジョン・カーペンターの淡白さ

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子役だったカート・ラッセルを起用



 1997年、アメリカ合衆国の犯罪率は400%を超え、政府はニューヨークのマンハッタン島を刑務所にした。犯罪者はそこに集められ、誰も出ることができない恐怖の島となった。そんなニューヨークに大統領が乗るエアフォースワンが墜落。その救助を、かつての特殊部隊員スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)が命じられる。しかも24時間以内に任務を遂行しなければ、体内の小型爆弾が爆発してしまう…。


 このユニークにしてワイルドなプロットはカーペンターが学生時代に思いついたものだったという。


 「SF作家のハリイ・ハリスンの小説「殺意の惑星」に着想を得たんだ。最も危険な惑星行きを任命された男たちの話さ。主人公は問題を解決する使命があるんだが、『是非私が!』と志願するわけではなく、その任務を成功させないと、自分が死んでしまうから仕方なしに行動するんだ」*


 そんな後ろ向きでシニカルな主人公として創造されたキャラクターこそ、スネーク・プリスキンだった。『ニューヨーク1997』の映画としての魅力は、このスネークが全てを担っていると言っても過言ではない。なぜならスネークこそ、カーペンター映画の哲学を体現する存在だからだ。


 脚本執筆時のカーペンターは、スネーク役にクリント・イースウッドをイメージしていたという。しかし低予算の『ニューヨーク1997』では、既に大スターだったイーストウッドをキャスティングすることは不可能。映画会社からはチャールズ・ブロンソンやトミー・リー・ジョーンズを推されたが、カーペンターが白羽の矢を立てたのは、カート・ラッセルだった。ラッセルはディズニー映画の子役として有名だったが、アクション映画の経験は皆無。映画会社は難色を示したが、2年前にTV映画『ザ・シンガー』で共に仕事をしたカーペンターには確信があった。



『ニューヨーク1997』© 1981 STUDIOCANAL SAS - All Rights Reserved.


 『ザ・シンガー』でエルビス・プレスリーを演じたラッセルのことを、カーペンターはこう振り返っている。


 「事務所に来たカートを見て驚いて途方に暮れたよ。エルビスの面影もないんだ。『君がこの役をやれるなら、私も監督ができるね』と皮肉を言ったよ。でも彼は素晴らしかった。カート・ラッセルは生まれつきものまねの才能がある。天性の俳優なんだ」*


 ラッセルは、『ザ・シンガー』のプレスリー役でエミー賞の主演男優賞にノミネートされ、大人の俳優としての活動を本格化させた。見た目が似ていないにも関わらず、プレスリーを演じきったラッセルなら、ニヒルなプリスキンも演じられとカーペンターは踏んだのだ。ラッセルもその期待に応えようと役作りを開始。肉体をマッチョに改造、さらにプリスキンが着る独特のノースリーブシャツも、彼が旅行先で偶然みかけた物を直感的にとりいれたという。





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