(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『ウエスト・サイド・ストーリー』名作の復活にあたり、スピルバーグは何を守り、何をアップデートしたのか
2022.02.11
受け継がれた振付家のスピリット
まず時代背景。オリジナルに忠実に、1950年代に設定された。1961年の『ウエスト・サイド物語』で、あの有名なソール・バスによるオープニングタイトルの後、マンハッタンの空撮が地上に降りていったように、今回も空からのカメラがNYのある地点に降下する。それは、開発中の荒れ果てた区域だ。セントラル・パークの南西に位置し、メトロポリタン・オペラ・ハウスなどを擁するリンカーン・センターの建設が、まさに始まろうとする1950年代半ばが、この作品の背景であることを知らしめる。オリジナルの作曲を手がけたレナード・バーンスタインはリンカーン・センターでもコンサートを行なっており、その部分へのリスペクトも感じさせるオープニングだ。
1961年版でも重要だったのが、最初のナンバーである「プロローグ」で、キャストが踊り始めるタイミングである。街を練り歩く、いわゆる“不良”の若者たちが、バレエのような動きを見せる。明らかな違和感をどう押し切るか。今回の『ウエスト・サイド・ストーリー』も、ほぼ同じタイミングで、その動きも1961年版に近い。一気にミュージカルの世界へ導くうえで、オリジナルの踏襲は重要だったようだ。
『ウエスト・サイド・ストーリー』(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ブロードウェイ版、1961年の映画、ともに振付を手がけたのは、ジェローム・ロビンス。クラシックバレエの動きを取り入れた、当時のミュージカルとしては斬新なスタイルに対し、今回の振付者、ジャスティン・ペックは、ロビンスの動きを要所で意識しつつ、基本的にクラシックの要素は消し、よりエネルギッシュに、そしてスタイリッシュな動きを取り入れた。ペックは、ロビンスと同じニューヨーク・シティ・バレエで活躍しており、ロビンスの“魂”を受け継いでいる自覚があるので、逆に自由に進化させることができたようだ。主人公の2人、マリアとトニーが出会うシーンなど、オリジナルに忠実な振付も発見できる。