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『1900年』ドキュメンタリーとフィクションの境界を越えた、堂々たるイタリア現代史

(c)Photofest / Getty Images

『1900年』ドキュメンタリーとフィクションの境界を越えた、堂々たるイタリア現代史

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タイトルバックに使われた絵画『第四階級』



 ベルトルッチにとって、『1900年』は酷烈な経験となった。


 「ぼくは心身ともにぼろぼろになったが、より大人になったね。プロデューサーは、直接的な物質的関心以外に、もうけと、精神的期待まで賭けていることが分かった。その期待は映画監督のそれに劣らず、非常に複雑で、強力で、執拗だった」*


 だが、ベルトルッチのフィルモグラフィーを見渡してみたとき、この映画は作られるべくして作られた作品であることがよく分かる。『革命前夜』(64)、『暗殺のオペラ』(70)、『暗殺の森』(70)、『ラストエンペラー』(87)といった諸作は、歴史映画であると同時に、“革命”を高らかに宣言した映画でもあった。ベルトルッチの流麗な演出の裏には、彼の共産主義的な政治姿勢が色濃く反映されている。そして本作もまた、1900年から1945年までの半世紀をなぞりながら、資本階級に対する労働者階級の勝利=革命が謳われているのだ。



『1900年』(c)Photofest / Getty Images


 象徴的なのは、オープニング。タイトルバックに使用されている絵画は、ジュゼッペ・ペリッツァ・ダ・ヴォルペードが1901年に発表した「第四階級」 (Il Quarto Stato)だ。横長のキャンバスに、貴族階級、聖職者階級、中産階級(市民層)に次ぐ第四の階級、労働者階級の面々が描かれている。資本家による搾取・圧政に対して決起し、しっかりとした足取りでデモ行進する姿は、当時の急進的社会主義者たちのシンボルとなった。ベルトルッチの想いが、この一枚の絵画に凝縮されている。


 本作の原題は、イタリア語で1900年代を表す『Novecento』。しかし、海外では『1900』というタイトルで公開されてしまい、それにベルトルッチはいたくご不満だったらしい。20世紀とは革命の時代、労働者階級の勝利の時代であることを、彼は強く訴えたかったのだろう。





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