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『1900年』ドキュメンタリーとフィクションの境界を越えた、堂々たるイタリア現代史

(c)Photofest / Getty Images

『1900年』ドキュメンタリーとフィクションの境界を越えた、堂々たるイタリア現代史

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『1900年』あらすじ

アルフレードとオルモは1900年の同じ日に生まれた。アルフレードは大地主、オルモは小作人頭の息子と、それぞれ立場は違うが、二人は仲良く育った。しかしアルフレードの祖父が死に、アルフレードの父が後を継ぐと、のどかだった農村の暮らしは激変する。アルフレードの父は小作人たちを人間扱いしなかった。やがて成長したオルモは搾取される小作人たちを救うべく立ち上がり、地主となったアルフレードと対立することになる。20世紀前期のイタリアに吹き荒れていた左翼とファシズムの抗争、農民と地主の階級闘争の嵐。親友だった二人の青年は歴史の荒波にのまれていく・・・。


Index


カルト・ムービーと化してしまった、“呪われた映画”



 「あらゆるカルト・ムービーの例にもれずに、大勢の観客向けに作られたにもかかわらず、大観客に受け入れられずに、呪われた映画になってしまった」*


 『1900年』(76)に関して、監督のベルナルド・ベルトルッチはこんな風に回顧している。本作は20世紀初頭のイタリアを舞台に、同じ日に生まれた大農場主の息子アルフレード(ロバート・デ・ニーロ)と、小作人頭の息子オルモ(ジェラール・ドパルデュー)の友情と対立を描いた一大叙事詩。本人はこの映画に対して恨み節だが、スティーブン・シュナイダーの名著「死ぬまでに観たい1001本の映画」にも選出され、映画史にその名を刻む重要作であることは間違いない。個人的にも、ベルトルッチのベスト・ワークであると確信しております。


 当時まだ30代半ばだったベルトルッチ、彼自身の言葉を引用するなら「思いつくプランは何でも撮れる」という自信に満ち溢れていた。ピエル・パオロ・パゾリーニの原案を元にした『殺し』(62)で颯爽とデビューするや、続く第2作『革命前夜』(64)でカンヌ国際映画祭の新評論家賞を受賞し、『暗殺の森』(70)では全米映画批評家協会賞の監督賞を受賞。そして『ラストタンゴ・イン・パリ』(72)はそのセンセーショナルな内容が世界中を席巻し、アカデミー監督賞と主演男優賞にノミネート。彼は“イタリアが生んだ若い才能”であるばかりか、すでに“世界が認める映画作家”という位置づけだったのだ。


『1900年』予告


 上映時間は5時間16分、撮影期間は14ヶ月(当初は9ヶ月だったが、追加撮影でさらに5ヶ月を要した)、エキストラは12,000人以上。このとてつもないビッグ・プロジェクトには、当然ハンパない製作資金が必要となる。そこで、ユナイテッド・アーティスツから200万ドル、パラマウント・ピクチャーズから200万ドル、20世紀フォックスから200万ドル、合計600万ドルという予算が捻出された(最終的には300万ドル予算オーバーして900万ドルにまで膨れがってしまうのだが)。


 だが『1900年』は、ベルトルッチの言葉通り“呪われた映画”となってしまう。プロデューサーを務めたアルベルト・グリマルディとの確執が、大きな影を落としていたのである。




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