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『ダンテズ・ピーク』リアリティを追求したディザスター映画の秀作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ダンテズ・ピーク』リアリティを追求したディザスター映画の秀作(前編)

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噴火の危険性への警告と、地元の経済活動とのバランス



 火山学者のハリー・ダルトン(ピアース・ブロスナン)は、コロンビアで火山活動の観測中に、同僚で婚約者のマリアン(ウォーカー・ブラント)を降ってきた火山弾によって失い、それ以来独身を通していた。


 4年後、休暇中だったハリーは、勤務する米国地質調査所の上司であるポール・ドレイファス(チャールズ・ハラハン)から命令され、ノーザン・カスケードのダンテズ・ピークへ出向く。ハリーは、町長(吹替え版では市長)のレイチェル・ワンダ(リンダ・ハミルトン)の案内で、彼女の娘のローレン(ジェイミー・レネー・スミス)と共にダンテズ・ピークの調査に向かう。レイチェルは途中、立ち入り禁止の鉱山跡で遊んでいた長男のグレアム(ジェレミー・フォリー)も拾い、山中の一軒家に住む、仲の悪い元義母ルース(エリザベス・ホフマン)に預けることにした。結局、火口湖の調査に3人も同行することになるが、天然温泉で息絶えていたバックパッカー2名の死体を発見する。


 噴火の兆候を直感したハリーは、レイチェルに緊急の町議会の招集を要請し、さらにポールに本格的な調査活動開始を依頼する。議員たちは、町に大規模な開発投資を検討中のブレア社が撤退する可能性を恐れ、町民に警告することに反対の立場を採った。さらに到着したポールも、過去の失敗の経験から、充分な証拠が得られるまで発表を控えるようにハリーに命じ、彼を調査から外す。



『ダンテズ・ピーク』(c)Photofest / Getty Images


 おそらくハリー(および婚約者だったマリアン)のモデルとなった人物は、モーリスとカティアのクラフト夫妻ではなかろうか。夫妻は共に火山学者で、誰よりも早く活動し始めた火山に到着し、危険を冒してまで記録を取り続けた人物である。例えば、コロンビア・アンデス山脈のネバド・デル・ルイス火山では、夫妻が1985年に噴火の調査に入り、コロンビア政府へ避難勧告をしている。だが政府は勧告を無視した。その結果、大規模なラハールが発生し、麓のアルメロの町を直撃した。そして当時の住民約31,000人の内、死者23,000人、負傷者5,000人という、20世紀における火山災害で2番目となる被害を記録してしまった。


 生涯でクラフト夫妻が調査した火山の数は全世界184カ所にも及び、写真やドキュメンタリー映画を至近距離で撮影した。こうやって得られた貴重な映像記録は、啓蒙活動や避難勧告に活用された。しかし残念ながら1991年、雲仙・普賢岳の噴火で火砕流に襲われ、2人共亡くなっている。




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